「バックアップは取っていますか」と聞くと、こう返ってくることが多いです。
「クラウドに置いているので大丈夫です」
半分は合っていて、半分は違います。そして違うほうで事故が起きます。
クラウドが守ってくれること
Microsoft 365(SharePoint / OneDrive / Exchange)に置いてあるものは、これらから守られています。
- サーバーの故障(複数箇所に複製されています)
- 建物ごとの災害
- PCが壊れた・盗まれた(データはPCの中に無いので)
- 上書きしてしまった(バージョン履歴から戻せます)
ここは、社内のファイルサーバーより明らかに強いです。
クラウドが守ってくれないこと
問題はこちらです。
1. 人が消したものは、期限が来ると本当に消える
ごみ箱に入りますが、保持される期間には上限があります。その期間を過ぎたものは、通常の方法では戻せません。
「半年前のあのファイル」を探そうとして無い、というのはここです。
2. 退職者のデータは、アカウント削除後に消える
これがいちばん多い事故です。退職者の OneDrive には業務のファイルが残っていますが、アカウントを削除すると一定期間後に中身も消えます。
対処は退職者のアカウントが残っている、を仕組みで止める に書きましたが、要点は在籍中に共有の場所へ移してもらうことです。
3. 間違った内容で上書きされ続けた場合
バージョン履歴は万能ではありません。保持される版の数には上限があるので、気づかないまま何十回も上書きされると、正しい版まで遡れなくなります。
4. 消したことに気づかない
いちばん厄介なのがこれです。誰かがフォルダごと消しても、すぐには誰も気づきません。気づくのは、それが必要になった日です。そのとき、すでに期限を過ぎていることがあります。
5. ランサムウェア
PCが感染して、同期しているフォルダのファイルが暗号化されると、その状態がクラウドにも同期されます。バージョン履歴から戻せることが多いですが、ファイル数が多いと復旧はかなりの作業になります。
では、どうするか
大掛かりな話ではなく、順番に潰していけば足ります。
第1段:保持期間を把握して、必要なら延ばす
まず現状を知ります。
- ごみ箱の保持期間はどうなっているか
- 削除したアカウントのデータは、どのくらい残るか
- バージョン履歴は何版まで残るか
管理画面で確認できます。既定のままで足りるかを、一度だけ判断してください。足りないなら設定で延ばせることがあります(プランによります)。
第2段:消えて困るものを決める
全部を守ろうとしないのがコツです。守るものを決めます。
- 契約書、図面、規程 … 消えたら再作成できない
- 会計・請求のデータ … 法定保存の要件がある
- 顧客とのやりとりの記録
逆に、作業中のファイルや過去の資料は、消えても再作成できることが多い。「消えたら再作成できないもの」だけを守ると考えると、対象がぐっと減ります。
第3段:重要なものだけ、別の場所に置く
守ると決めたものは、Microsoft 365 の外にも1つ置きます。
やり方はいくつかありますが、費用をかけない範囲なら、
- 月1回、対象フォルダを外付けHDDにコピーする(手作業でも構いません)
- コピーは世代を分ける(
2026-042026-05のようにフォルダを分ける。上書きしない) - 外付けHDDは、常時つなぎっぱなしにしない(つなぎっぱなしだと、ランサムウェアの影響を受けます)
原始的ですが、「別の場所に、つながっていない状態で置く」というのがバックアップの本質です。クラウドの中で複製を増やしても、消す操作は全部に伝わります。
有償のバックアップサービスもあり、規模が大きいならそちらが確実です。ただしまずは対象を絞ることが先で、絞れば手作業でも回ります。
バックアップで本当に大事なのは、取ることではなく戻せることを確認しておくことです。「取っているはずだったが、戻そうとしたら壊れていた」は、実際に起きます。年1回、1ファイルでいいので実際に戻してみてください。5分で終わります。
第4段:消えたことに気づける形にする
- 重要なフォルダは、権限を絞る(消せる人を減らす)
- 大量削除が起きたときに管理者に通知が飛ぶよう設定できるなら、しておく
- 定期の棚卸し(年2回)のときに、重要フォルダの件数を記録しておく
件数を記録しておくと、次回に「減っている」ことに気づけます。手間はほとんどかかりません。
まとめ
- クラウドが守るのは機器の故障・災害・端末の紛失・上書き
- 守らないのは人が消したもの(期限あり)・退職者のデータ・気づかない削除・ランサムウェア
- 保持期間を一度確認する。既定で足りるかを判断する
- 「消えたら再作成できないもの」だけを守る対象にする
- 対象は Microsoft 365 の外に、世代を分けて、つなぎっぱなしにしない場所へ
- 年1回、実際に1ファイル戻してみる。これが無いバックアップは、あるとは言えません
- 重要フォルダは権限を絞り、件数を記録しておく
「うちの保持期間がどうなっているか分からない」から始めても構いません。確認するところまでご一緒できます。
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