「総務への問い合わせが多くて困っている。AIに答えさせられないか」
この相談が、この1年で明らかに増えました。
私自身、業務で Copilot Studio を使って社内ナレッジ検索のエージェントを作りました。ナレッジソースとして SharePoint と OneNote をつないでいます。それをやってみて分かったのは、答えの質を決めたのはボット側の作り込みではなく、つないだ先の文書の状態だったということです。
作る前にやっておくと結果が変わることを、効いた順に書きます。
AIは、探せない資料を探せるようにはしない
いちばん最初に伝えておきたいのがこれです。
社内で「あの資料どこですか」と聞かれる状態は、資料が無いのではなく、あるのに見つからない状態です。そしてこの「見つからない」の中身は、だいたい次のどれかです。
- どこに置いてあるか分からない
- 似た名前のファイルが5個あって、どれが最新か分からない
- 中身を開かないと、それが探しているものか分からない
このうちAIが得意なのは、3つめだけです。1つめは検索範囲を指定すれば解決しますが、2つめは解決しません。むしろ悪化します。人間なら「あ、これ去年のやつだ」と気づけますが、生成AIは古い版を平然と根拠にして、自信のある文章で答えます。
なので順番としては、文書を整えてからつなぐ。逆にすると、間違った答えが出た原因を追いかける時間のほうが長くなります。
つなぐ前に必ず確認してほしいのが、SharePointの閲覧権限です。Copilot は基本的に「その人が見られる範囲」でしか答えませんが、裏を返すと全社に公開されたままになっている、見えてはいけない文書があると、検索経由で普通に出てきます。今まで見つからなかったから問題になっていなかっただけ、というケースはあります。導入前に、公開範囲が広いフォルダを一度洗ってください。
効いたのは、1文書を1テーマにしたこと
いちばん体感が変わったのがここでした。
社内文書は、往々にして1本のファイルに何もかも入っています。「総務手続きマニュアル」に、住所変更も、慶弔見舞金も、駐車場の申請も、備品の発注も入っている。
こういう文書を根拠に答えを作らせると、質問と関係のない章が混ざってきます。「駐車場の申請方法は」と聞いたのに、慶弔の話が一段落くっついてくる。
これを、テーマごとのページに割りました。
- 住所が変わったときの手続き
- 慶弔見舞金の申請
- 駐車場の利用申請
- 備品を発注したいとき
1ページ1テーマ。長さは画面1〜2枚分。これだけで、返ってくる答えがかなり素直になりました。
ファイルを割るのが大変なら、SharePointのページや OneNote のセクションに移すだけでも効果があります。大事なのは形式ではなく、ひとかたまりの中に別の話を混ぜないことです。
古い版は、消すか、置き場所を分ける
「2024年度版」「2025年度版」「最新版」「最新版_改訂」が同じフォルダに並んでいる状態は、生成AIにとっていちばん厳しい環境です。どれが生きているかを判断する材料が中身に書かれていないからです。
やることは単純です。
- 生きている版だけを、AIにつなぐ場所に置く
- 過去の版は別のフォルダに移す(消せないものが多いので、隔離でいいです)
- ファイル名から「最新」「改訂」「新」を消して、発効日を入れる(
駐車場利用申請_2026-04-01.docx)
「最新版」という名前は、次の版が出た瞬間に嘘になります。日付は嘘になりません。
タイトルに、聞かれる言葉を入れる
文書のタイトルは、検索でかなり強く効きます。
そして社内文書のタイトルは、社内の正式名称で書かれていて、社員が実際に使う言葉と一致していないことがよくあります。
| 正式名称のタイトル | 実際に聞かれる言い方 |
|---|---|
| 就業規則第◯章 特別休暇規程 | 忌引 何日 |
| 固定資産管理要領 | パソコン 買い替え 申請 |
| 通勤手当支給基準 | 引っ越し 交通費 変更 |
タイトルを変えられないなら、文書の冒頭に1行足すだけでも効きます。「この文書は、忌引・慶弔の休暇日数について書いています」のような、話し言葉に近い1行です。
これは検索エンジン向けのテクニックというより、AIに文書の趣旨を1行で伝えているのに近いです。人が読んでも役に立つので、やって損がありません。
答えられなかった質問を、集める
ここからは運用の話ですが、導入前に決めておく必要があります。
エージェントを公開すると、答えられなかった質問が出ます。これは失敗ではなく、次に作るべき文書のリストです。ここを拾わない運用にしてしまうと、最初に用意した文書の範囲から一生広がりません。
決めておくこと。
- 答えられなかった質問を、どこに記録するか
- それを誰が、どのくらいの頻度で見るか(月1回・15分で十分です)
- 見たうえで、文書を足す人は誰か
ここまで決まって、はじめて「問い合わせが減る仕組み」になります。決めないと、公開直後だけ使われて、あとは誰も開かないページになります。
そして正直なところ、この運用が回せないなら、まだ作らないほうがいいです。作ること自体は難しくないので、いつでもできます。難しいのは続けることのほうです。
まとめ
- AIは「見つからない」を解決するが、「どれが最新か分からない」は解決しない。むしろ悪化する
- つなぐ前に、公開範囲が広すぎるフォルダを洗う
- 1文書1テーマに割る。効果がいちばん大きい
- 古い版は隔離し、ファイル名は「最新版」ではなく発効日にする
- 答えられなかった質問を集める。それが次に作る文書のリスト
道具の話がほとんど出てこないのは、そのとおりで、ここまでが済んでいれば Copilot Studio 側の設定はそれほど込み入りません。逆にここを飛ばすと、設定をどれだけ触っても答えは良くなりません。
「うちのSharePointはどのくらい整理が要るのか」を見るところからでも構いません。まずは今どうなっているかを聞かせてください。
この記事で使うシートを配っています
業務棚卸しシート
「どの業務から手をつけるか」を決めるためのシートです。作業を書き出して時間・回数・重要度・判断の有無を埋めると、優先度が自動で並びます。実際の打ち合わせで使っているものをそのまま置いています。
ダウンロード(無料・登録不要)読んだうえで「うちの場合はどうか」を話したい方へ
OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。