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紙の申請書をやめるとき、いきなりアプリを作らないほうがいい理由

紙の申請書をそのまま画面に写すと、たいてい使われないものになります。電子化そのものより先に決めたほうがいいこと、そして「まず入口だけ変える」という進め方について書きました。

読了 約5分 申請 承認業務改善Power Apps

「この申請書、紙で回してるんですけどアプリにできませんか」

できます。技術的にはそれほど難しくありません。ただ、紙の申請書をそのまま画面に写したものは、かなりの確率で使われなくなります。

理由は機能不足ではなく、紙と画面で向いていることが違うからです。この記事では、作りはじめる前に見直しておくと結果が変わるところを書きます。

紙のレイアウトを画面に写すと、かえって使いにくくなる

紙のいいところは一覧性です。A4を1枚見れば、記入欄が全部目に入る。どこが埋まっていないかも一目で分かります。

画面が得意なのは順番です。1問ずつ出して、答えによって次を変えられる。逆に、紙と同じ密度で入力欄を並べると、スマートフォンでは絶望的に使いにくくなります。

なので、紙をPDFのように再現するのではなく、こう組み替えます。

  • 記入欄を、必ず要るもの条件によって要るものに分ける
  • 条件によって要るものは、条件を満たしたときだけ出す
  • 分かる情報は、そもそも聞かない(申請者の氏名・所属・社員番号は、ログイン情報から入れる)

ここで入力欄が3割くらい減ることがよくあります。減った理由は機能を削ったからではなく、紙だったから毎回書いてもらっていただけ、というものが混ざっているからです。

先に確認しておきたいこと

その申請書は、社外に出しますか。押印が要りますか。監査で紙の現物を求められますか。ひとつでも当てはまるなら、「紙を完全になくす」を前提に設計すると途中で行き詰まります。紙が残る前提で、どこまでを画面にするかを決めたほうが、結果的に早く進みます。

承認の段数は、電子化する前に減らせる

紙の申請書が遅い原因は、たいてい様式ではなく段数です。

課長 → 部長 → 総務 → 経理。4人が押す。実際に中身を見て判断しているのは最初の1人だけで、あとの3人は「前の人が押しているから」で押している——これは珍しい話ではありません。

ここを電子化すると何が起きるかというと、速くはならず、遅いことが見えるようになります。「部長のところで3日止まっています」が可視化されるだけです。可視化には意味がありますが、期待されていたのはたぶんそれではありません。

なので、作る前に一度これを聞いてみてください。

  • この承認者は、何を見て、どういうときに差し戻しますか
  • 過去1年で、実際に差し戻したことはありますか。何件ですか
  • 金額や内容によっては、この承認を飛ばしてよいものはありますか

「一定金額以下は課長まで」のような線が引けると、それだけで大半の申請が2段になります。ツールを入れるより、この線を1本引くほうが効きます。

そして、この見直しは電子化と同時にやったほうがいいです。別々にやると「今は忙しいので現状のままで」となり、紙のときの段数がそのまま画面に固定されてしまいます。一度作ったフローの段数を後から減らすのは、政治的にかなり大変です。

まず「入口」だけ変える

全部を一度に変えないほうがいいです。申請・承認・保存・集計を全部まとめて作り替えると、関係者が増え、決めることが増え、止まります。

現実的なのは、入口だけ先に変えるやり方です。

  1. 申請の入口をフォームにする(Microsoft Forms でも、Power Apps でも、社内で使えるもので構いません)
  2. 出てきたものは、いったん今までと同じExcelやフォルダに落とす
  3. 承認と保存は、しばらく今のやり方のまま

これだけで、手書き・スキャン・持ち回りが消えます。効果としては十分に体感できるはずで、しかも承認のルールを触っていないので、決裁を取りにいく相手が少なくて済みます。

そのうえで、しばらく運用してから次を決めます。実際のデータが溜まると、「差し戻しはこの項目でしか起きていない」「この欄は誰も埋めていない」といったことが数字で分かるので、二段階目の設計がかなり楽になります。

差し戻されたときの体験を、先に決める

申請の仕組みは、通るときの動きより差し戻されるときの動きで評価されます。ここが雑だと、現場は「紙のほうが早い」と言い出します。

決めておくのはこのあたりです。

  • 差し戻されたことは、どこで分かるか(メール/Teams/アプリを開いたら分かる)
  • 差し戻し理由は必須か。任意にすると、ほぼ空欄で返ってきます
  • 直すとき、前に書いた内容は残っているか。ゼロから書き直しになる作りは、それだけで使われなくなります
  • 直したあと、最初の承認者からやり直しか、差し戻した人に戻るか

最後のひとつは業務のルールなので、こちらでは決められません。作る前に聞いておく必要があります。

紙が残る前提で設計する

最後に、身も蓋もない話をします。

紙は、たぶん全部はなくなりません。押印が要るもの、社外に出すもの、法定保存で現物が要るもの。これらは残ります。

そのときに困るのが、画面で完結する前提で作ってしまった場合です。「電子で申請したあと、印刷して押印して、それをスキャンして添付する」という運用が後から生えてきて、紙のときより手間が増えます。

なので、最初からこう決めておきます。

  • 紙が要るものは、画面から印刷用のPDFが出せるようにしておく
  • 押印済みの現物を保管する場所と、画面上の申請番号を紐づけるルールを決める
  • 「全部電子」ではなく「申請と履歴は電子、現物が要るものだけ紙」を目標にする

きれいではありませんが、こちらのほうが現場は回ります。


まとめ

  • 紙のレイアウトを写さない。必ず要る欄と、条件によって要る欄に分ける
  • 電子化しても承認は速くならない。段数を減らす話は、作る前にしておく
  • 全部やらない。入口だけ先に変えて、後ろは今のままでも効果は出る
  • 差し戻されたときの動きを先に決める
  • 紙は残る前提で、紙と画面の役割分担を決めておく

どれもツールを選ぶ前の話です。ここが決まっていれば、Power Apps でも他の方法でも、作るもの自体は素直になります。

「うちの申請書だとどう組み替えるか」を一緒に見るところからでも構いません。資料室に業務を書き出すためのシートを置いてあるので、埋めたものを持ってきてもらえれば、そこから話せます。

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