Copilot を契約して、全社に配って、使い方の説明会をやった。それでも1か月後には、ほとんど誰も開いていない。
これは失敗ではなく、いちばん普通に起きる経過です。原因もはっきりしています。
- 何に使えばいいか分からない(「何でもできます」は「何もできません」と同じ意味に受け取られます)
- 一度試して期待と違う答えが返ってきて、それきり
- 使っている人と使っていない人の差が見えないので、誰も焦らない
逆に、定着した現場には共通してやっていたことがあります。最初の30日で決まるので、そこを週ごとに書きます。
第1週:全員に配らない。5人に絞る
いちばん重要なところです。
全社に一斉に配ると、誰も自分ごとにしません。「そのうち誰かが使い方を教えてくれるだろう」で終わります。
やるのは逆で、
- 文章を書く時間が長い人を5人選ぶ(企画、総務、営業事務、品質保証など)
- その5人に、他の人より先に渡す
- 「試してみて、効いた使い方を教えてほしい」と役割を与える
役割があると人は試します。そして5人分の実例が集まると、それが次の説明会の中身になります。メーカーの資料より、隣の部署の人がやっている実例のほうが100倍効きます。
ITに詳しい人ではなく、文章と資料作りに時間を取られている人を選んでください。詳しい人は機能を試して満足しがちですが、困っている人は業務に使います。実例が出てくるのは後者です。
第2週:使う場面を3つに固定する
「何でも聞いてください」をやめて、この3つだけを最初の型にします。
- 長い資料を要約する(議事録、報告書、外部から来た仕様書)
- たたき台を書かせる(メールの下書き、案内文、議事録の骨子)
- 自分の書いたものを直させる(もっと短く、もっと丁寧に、箇条書きに)
この3つは、答えが間違っていても被害が小さく、効果がすぐ体感できるという共通点があります。
逆に、最初にやらせないほうがいいのはこれです。
- 社内の規程やルールを調べさせる(元の文書が整っていないと、平気で間違えます。前の記事 に書きました)
- 数字の計算をさせる
- 事実確認が必要な調べもの
「そのまま使える」ものと「自分で確認してから使う」ものの線を、最初に引くのが要点です。ここを曖昧にしたまま広げると、一度大きく間違えたときに「やっぱり使えない」で終わります。
第3週:うまくいった指示文を、1か所に集める
生成AIの使い勝手は、指示の書き方でほとんど決まります。そして良い指示文は、書ける人と書けない人がはっきり分かれます。
なので、書ける人のものを共有します。
- Teams のチャネルか SharePoint のページを1つ作る
- 「これを貼ったらうまくいった」を、そのままコピペで置く
- 加工しない。きれいなマニュアルにしない(作る手間が発生した瞬間に止まります)
3週目には、5人から10〜20個くらい集まります。これがそのまま社内の教材になります。
集まった指示文を見ると、その会社で本当に時間を食っている作業が分かる、という副産物もあります。
第4週:ここで初めて広げる
30日目に、実例を持って全体に展開します。説明会でやることは機能紹介ではなく、
- 「〇〇部の△△さんは、これに使って、月◯時間減りました」
- 「よく使われている指示文はこれです」(第3週で集めたもの)
- 「これはやらないでください」(線引きの再確認)
この3つです。機能の説明はしません。必要になったら調べられます。
そして、広げた後も指示文を集める場所は開けたままにしておく。ここが閉じると、定着は3か月で止まります。
効果の測り方について
「導入効果を数字で出したい」と言われることがあります。正直に書きます。
厳密な計測は、たいてい労力に見合いません。 使用ログは取れますが、「開いた回数」と「業務が楽になったか」は別の話です。
現実的なのは、第1週に選んだ5人に最初と30日後に同じ質問をすることです。
- この1週間で、資料作成や文章書きに何時間使いましたか(だいたいで構いません)
- そのうち、Copilot を使ったのはどのくらいですか
- いちばん助かった場面を1つ教えてください
数字の精度は粗いですが、3つめの回答が次の展開の材料になります。これが集まらないなら、その組織ではまだ定着していない、という判断もできます。
まとめ
- 全社に一斉配布しない。文章仕事が多い5人に先に渡し、役割を与える
- 最初は要約・たたき台・書き直しの3つに固定する
- そのまま使えるもの/自分で確認してから使うものの線を最初に引く
- うまくいった指示文を1か所に集める。加工せずコピペで置く
- 広げるのは30日目。実例だけを持っていく。機能紹介はしない
Copilot Studio でエージェントを作る話は、この後の段階です。まず全社の土台がこの状態になってからのほうが、作ったものも使われます。
「どの5人を選ぶか」から一緒に考えることもできます。まずは今の状況を聞かせてください。
この記事で使うシートを配っています
業務棚卸しシート
「どの業務から手をつけるか」を決めるためのシートです。作業を書き出して時間・回数・重要度・判断の有無を埋めると、優先度が自動で並びます。実際の打ち合わせで使っているものをそのまま置いています。
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OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。