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そのアプリ、Excelの関数だけで足りませんか

相談の何割かは、アプリを作らなくても解けます。作ると面倒を見る対象が1つ増えるので、作らずに済むならそのほうが得です。判断の分かれ目を具体的に書きます。

読了 約4分 Excel業務効率化ツール選定

「これ、アプリにできませんか」と相談されて、話を聞いていくうちに 「それ、関数だけで足りますよ」 と返すことが、わりとよくあります。

売上にはなりませんが、そのほうが相手にとって得だからです。アプリを作ると、その瞬間から面倒を見る対象が1つ増えます。作った人が異動したら、直せる人がいなくなる。そこまで含めて考えると、作らずに済むなら作らないほうがいい。

では、どこが分かれ目か。

作らなくていい典型

ケース1「別の表から値を引っ張ってきたい」

商品コードから商品名と単価を引く、社員番号から所属を引く。これは関数の仕事です。

XLOOKUP(古い環境なら VLOOKUP)で足ります。よくある詰まり方は、

  • 引く元の表が1行1件になっていない(結合セル、2段見出し)
  • コードの表記がゆれている(前ゼロあり/なし、全角/半角)
  • 引く元が別ファイルにあって、閉じていると更新されない

3つめが起きるなら、引く元のシートを同じファイルの中に持ってくるのが早いです。それだけで安定します。

ケース2「条件に合うものを数えたい・合計したい」

「A部署の、4月の、承認済みの件数」。COUNTIFS / SUMIFS の守備範囲です。

ここでアプリを作りたくなる理由はたいてい「集計表の見た目を整えるのが面倒」ですが、それはピボットテーブルで解けます。

ケース3「重複を消したい・並べ替えたい」

UNIQUE SORT FILTER があります。数式1本で、条件に合う行だけを別のシートに並べられます。

「元の表を触らずに、見たい形だけ別シートに出す」——この形にできると、元データを壊さずに済むので事故が減ります。

ケース4「入力ミスを減らしたい」

  • 選択肢から選ばせたい → 入力規則(データの入力規則)
  • 範囲外の数値を弾きたい → 入力規則
  • 条件に合う行を目立たせたい → 条件付き書式
  • 触ってほしくないセルを守りたい → シートの保護

これらは全部Excelの標準機能です。「アプリにすれば入力ミスが減る」と言われることがありますが、入力規則で足りることのほうが多いです。

作ったほうがいい分かれ目

逆に、ここに当たったらExcelで粘らないほうがいいです。

1. 同時に何人も入力するこれは関数では解けません。ただし、置き場所を SharePoint / OneDrive に変えるだけで済むこともあります(「誰かが開いています」で待たされる、を減らす)。それでも駄目なら移す。

2. 誰がいつ何を変えたかの履歴が要る監査、品質管理、金額の変更履歴。Excelは上書きで消えます。バージョン履歴はありますが、「この行を誰が変えたか」は追えません。

3. 権限を細かく分けたい「自分の入力した行だけ見える」「上長は部下の分だけ見える」。Excelのシート保護では無理です。

4. 外(メール、承認、他システム)とやりとりする通知を出す、承認を回す、別のシステムに渡す。ここはExcelの外の仕事です。

5. スマートフォンから入力するExcelもスマートフォンで開けますが、現場で片手で入力する用途には向きません現場にスマホで入力してもらうとき)。

6. 行数が万を超えて、増え続ける重くなり、壊れやすくなります。

ひとつでも当たれば作る、ではありません

上の6つのうち1つだけ当たっている場合は、そこだけ切り出すという手があります。たとえば「承認だけ回したい」なら、集計はExcelのまま、承認の部分だけ Power Automate に出す。全部を作り替える必要はありません。

判断のしかた

相談を受けたとき、私はこの順番で聞いています。

  1. 今、何人が同時に触りますか(1人なら、たいていExcelで足りる)
  2. 履歴は要りますか(要らないなら、まだExcelでいい)
  3. 外に何か出しますか(通知・承認・他システム)
  4. 何行ありますか。1年で何行増えますか

この4つで、だいたい判断が付きます。1〜4のどれにも当たらなければ、関数と入力規則とピボットで解ける可能性が高いです。

関数で解くときに、やっておくといいこと

作らない選択をした場合でも、これだけはやっておくと後が違います。

  • 元データのシートと、見せるシートを分ける。元データは1行1件、触らない
  • 数式を書いたセルに、何をしているか1行のメモを残す(セルのコメントでも、隣の列でも)
  • 名前の定義を使って、Sheet2!$A$2:$D$500 のような参照を減らす
  • ファイル名に日付を入れて、「最新版」と書かない共有フォルダのルール

アプリでもExcelでも、引き継げるかどうかが2年目を決めます。そこは同じです。

まとめ

  • 別表から引く/条件で数える/重複を消す/入力ミスを防ぐ ——ここは関数と標準機能で足りる
  • 作るべき分かれ目は、同時入力・履歴・細かい権限・外とのやりとり・スマホ入力・行数
  • 1つだけ当たっているなら、その部分だけ切り出す。全部を作り替えない
  • 判断は4つの質問で付く:同時に何人/履歴は要るか/外に出すか/何行あるか
  • 関数で解く場合も、元データと表示を分ける・メモを残す。引き継げるかが2年目を決める

「作らなくていい」で終わる相談は、実際に何件もあります。そう言える相手のほうが、次に本当に難しい話が来たときに呼ばれる、と思っています。

判断に迷ったら、その表を見せてもらえればその場で答えられます。

この記事で使うシートを配っています

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