紙でつけている点検表・作業日報・在庫の入出庫を、スマートフォンやタブレットから入力できるようにしたい。
作ること自体は難しくありません。ただ、事務所の机の上で作ったものを現場に持っていくと、かなりの確率で使われません。
理由は機能不足ではなく、現場の状況が事務所と違うからです。よくある詰まり方を並べます。
手袋をしている
タッチパネルが反応しません。あるいは反応が悪くて、狙ったところを押せません。
対処は、
- 押す対象を大きくする。指1本分ではなく、指2本分。1画面に並べるボタンは4つまで
- 文字入力を減らす。キーボードは手袋では厳しい。選択肢と数字入力に寄せる
- チェックボックスより、大きなボタンにする(○×を大きなボタン2つで)
「入力項目を3つ以内に」と Excelの在庫台帳が合わなくなる原因 にも書きましたが、現場ではさらに削る必要があります。
電波が届かない
工場の奥、倉庫、地下、屋外。繋がらない場所は必ずあります。
先に確認しておくこと。
- 入力する場所で、実際に電波が入るか(これは行って確かめるしかありません)
- 繋がらないとき、入力したデータが消えないか
- 繋がったときに自動で送信されるか、手動か
いちばんまずいのは、入力し終わってから送信に失敗して、全部消えることです。一度これが起きると、二度と使ってもらえません。
対処としては、
- 繋がらない場所があるなら、その場では紙に書いて、後でまとめて入力する運用も現実的な選択肢です
- 「全部をアプリで」にこだわらないほうが、結果的に定着します
画面が見えない
屋外だと、明るすぎて画面が見えません。逆に暗い場所では、明るい画面がまぶしい。
- 文字を大きく、コントラストを強く。薄いグレーの文字は屋外で消えます
- 情報を詰め込まない。1画面1目的
- 色だけで意味を伝えない(赤=異常、を色だけでやると屋外で判別できません。文字も併記する)
片手がふさがっている
工具を持っている、荷物を運んでいる、はしごに乗っている。両手で操作する前提が崩れます。
- スクロールを減らす。1画面で完結させる
- ボタンは画面の下寄りに置く(親指が届く範囲)
- 連続入力するなら、入力後に次の画面へ自動で進む
入力するタイミングが違う
これがいちばん大きいかもしれません。
事務所の人は「作業が終わったらすぐ入力する」と想定します。現場は、手が空いたときにまとめて入力します。
だとすれば、
- 後からまとめて入力できる必要がある(日時を手で直せるか)
- 「今日の分をまとめて入力」がしやすい画面になっているか
- 前回の入力をコピーして少し直す、ができるか(同じ作業の繰り返しなら効きます)
「その場で入力してもらう」を前提に作ると、たいてい前提が崩れます。そうしたい場合は、なぜその場で入力する必要があるのか(リアルタイムで見たい人がいるのか)を確認してください。翌朝で足りることが多いです。
ここまで書いてきたことは、全部現場に1回行けば分かることです。30分立って見ているだけで、事務所では想像もしなかったことが3つは出てきます。作り始める前に、1回行ってください。行けないなら、写真と動画を撮ってきてもらってください。
端末をどうするか
意外と詰まるのがここです。
- 個人のスマートフォンを使ってもらうのか、会社が支給するのか
- 個人端末を使うなら、業務アプリを入れてもらうことへの同意と、通信料の扱い
- 共用のタブレットを置くなら、誰が入力したかをどう記録するか(共用アカウントだと分からなくなります)
- 充電・防水・落下対策
技術より運用の話ですが、ここが決まっていないと本番が始まりません。作る前に決めておく項目です。
まとめ
現場で使われるかどうかを決めるのは、機能ではなく状況です。
- 手袋:ボタンを大きく、文字入力を減らす。1画面のボタンは4つまで
- 電波:繋がらない場所を先に確認。入力が消える作りにしない。紙との併用も選択肢
- 明るさ:文字を大きくコントラストを強く。色だけで意味を伝えない
- 片手:1画面で完結、ボタンは下寄り
- タイミング:その場入力を前提にしない。後からまとめて入れられるように
- 端末:個人か支給か、共用なら誰が入力したか。作る前に決める
そして、作る前に1回現場を見る。これがいちばん効きます。
現場を見るところからご一緒することもできます。写真と、実際に使っている紙の様式があれば、そこからでも話は始められます。
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