「Excelで在庫を管理しているんですが、実物と合わなくなるんです。システムを入れたほうがいいですか」
入れれば直ることもありますが、合わない原因がそのままなら、システムを入れても合いません。入力する人と入力するタイミングが変わらないからです。
在庫が合わなくなる原因は、経験上ほぼ3つに絞れます。どれなのかを先に切り分けます。
原因1:モノが動いた瞬間と、記録した瞬間がずれている
いちばん多いのがこれです。
- 持っていくときは急いでいるので、記録は「あとで」
- 「あとで」が翌日になり、翌週になり、忘れる
- 棚卸しのときに差分が出て、その場で数を合わせる(=原因が消える)
この形だと、台帳は常に実物より遅れています。そしてどれだけ遅れているかは誰にも分かりません。
潰し方は、記録を後回しにできなくすることです。
- 記録する場所をモノのそばに置く(棚の前にタブレット、あるいはスマートフォンで開けるフォーム)
- 入力項目を3つ以内にする(何を・いくつ・誰が。日時は自動)
- 「持ち出し」と「返却」だけにして、それ以外の区分を作らない
入力に30秒以上かかるものは、急いでいる人には使われません。ここを削るのが最優先で、システムかExcelかはその次の話です。
「バーコードで読めるようにしたい」という要望はよく出ますが、先に上の3点を直したほうが効果が大きいです。読み取りの仕組みは、入力項目が絞れてから足すほうが、安く確実に入ります。
原因2:同じモノが、違う名前で入っている
台帳を見ると、こういう行が並んでいます。
ボールペン(黒)
黒ボールペン
ボールペン 黒 10本入
BP-K
人間には同じものだと分かりますが、集計すると4種類になります。そして在庫数はどれを見ればいいのか分からなくなります。
これは入力の自由度が高すぎることが原因です。潰し方は決まっています。
- 品目マスタを1枚作る。扱っているものを一覧にする(最初は100行もあれば十分)
- 台帳ではマスタから選ぶ形にして、手入力させない
- 新しい品目が出たら、マスタに足してから使う
「マスタを作るのが大変」と言われますが、すでに台帳にある品名を重複排除して並べ、目で見て統合するだけです。半日で終わることが多いです。ここをやらないまま何を入れても、集計は合いません。
原因3:数を減らす経路が、把握されていない
在庫が減る経路は、正規のもの以外にもあります。
- サンプルとして持ち出した
- 不良で捨てた
- 別の部署に貸した(返ってこない)
- 現場で使い切ったが記録がない
これらが記録されないと、台帳のほうが必ず多くなります。そして棚卸しで合わないので、台帳を実物に合わせて書き換える。原因は残ったまま、また合わなくなります。
潰し方は、減る経路をすべて台帳の区分にすることです。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 出庫 | 通常の払い出し |
| 廃棄 | 不良・期限切れ |
| 貸出 | 他部署・現場へ(戻る前提) |
| 消費 | 現場で使い切った |
区分は増やしすぎないほうがいいですが、現実に起きている減り方は全部入れる。入っていない減り方は、必ず差分になって出てきます。
「廃棄を記録すると怒られるから書かない」という空気がある場合、これは仕組みでは直りません。記録しても責められない、と決めるのが先です。
切り分けの手順
3つのうちどれなのかは、こうやって見ます。
- 直近の棚卸しの差分を、品目ごとに並べる
- 特定の品目だけ大きくずれている → 原因2(名前のゆれ)か、その品目の減る経路を疑う
- 全体的にじわっとずれている → 原因1(記録の遅れ)
- 一部の品目だけ台帳のほうが多い → 原因3(記録されない減り方)
そのうえで、直す順番は 1 → 2 → 3 です。記録が遅れている状態で名前を整えても、合うようにはなりません。
システムを入れるべきなのはどんなときか
上の3つを潰しても、こういう場合は仕組みの力が要ります。
- 拠点が複数あって、同時に在庫を触る
- 過去の在庫推移を遡って見たい(Excelだと上書きで消えます)
- 発注点を超えたら自動で知らせてほしい
- 誰がいつ動かしたかの履歴が必要(監査や品質管理の要求)
このあたりが要件なら、SharePointリストや業務アプリに移す価値があります。逆に、これらが不要なら整えたExcelで十分回ります。
「システムを入れましょう」と言わずに終わる相談も、実際にあります。
まとめ
- 合わない原因は3つ。記録の遅れ/名前のゆれ/記録されない減り方
- 直す順番は 記録の遅れ → 名前のゆれ → 減る経路
- 入力はモノのそばで30秒以内。項目は3つまで
- 品目マスタを作って選ばせる。手入力させない
- 廃棄・貸出・消費も区分として台帳に入れる。記録しても責められない、と決める
- 同時利用・履歴・自動通知が要るなら、そこで初めて仕組みの出番
どの原因に当たっているかを見るところからでも構いません。棚卸しの差分表があると、その場で切り分けられます。
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「どの業務から手をつけるか」を決めるためのシートです。作業を書き出して時間・回数・重要度・判断の有無を埋めると、優先度が自動で並びます。実際の打ち合わせで使っているものをそのまま置いています。
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