業務改善の相談で、初期に必ず出る話です。
「まず現状の業務フロー図を書きましょう」
正しいのですが、書き方を間違えると1週間かけて誰も見ない図ができます。そして、そこで力尽きて改善そのものが止まります。
私の立場をはっきり書くと、多くの場合、図は要りません。ただし要る場面もあります。線引きの話をします。
要らない場合
こういうときは、書かずに進めたほうが速いです。
- 関係者が3人以下。頭の中で全員が分かっている
- 作業が1つの部署で完結している
- すでに手順書がある(図にし直す意味は薄い)
- 変えたいのが作業1つ(月次集計だけ、承認だけ)
このときに必要なのは図ではなく、「何を入力に取って、何を出すか」の1行です。
各部の月次報告Excel(12ファイル)
→ 1枚に集計 → 部長へメール(毎月5営業日目)
これで足ります。図にすると、四角と矢印を並べる時間のほうが長くなります。
要る場合
逆に、こういうときは書いたほうがいいです。
1. 部署をまたぐとき「総務は経理に渡していると思っていたが、実は営業事務が間に入っていた」——これは図にしないと出てきません。誰から誰へ渡るかが論点になった時点で、図の出番です。
2. 同じ情報が何度も入力されているのを示したいとき同じ数字を3回入力している、というのは図にすると一目で伝わります。言葉で説明しても「そんなものだろう」で流されますが、図で見ると「これはおかしい」となります。説得の道具として強い。
3. 承認や分岐が複雑なとき「10万円以上は部長、ただし消耗品は除く、ただし年度末は…」。これは文章にすると読めません。
4. 相手に見積りを取ってもらうとき外に依頼するなら、図があると精度が上がります。ただし、図がなくても 開発依頼まとめシート の項目が埋まっていれば足りることが多いです。
書くと決めたときの、最小の書き方
要ると判断したら、次はどこまで書くかです。きれいに書かないことを最初に決めてください。
記号は3つだけ
- 四角:作業(誰が、何をする)
- ひし形:分岐(承認する/しない)
- 矢印:流れ
正式な記法(BPMN など)を覚える必要はありません。社内の人が読めればいいので、記号は少ないほど良いです。
縦に部署を並べる
左に部署の列を作って、その部署がやることを横に並べます。いわゆるスイムレーンです。これだけで「誰から誰へ渡るか」が見えます。
「例外」は図に描かない
いちばん大事なところです。例外を図に入れ始めると、図が読めなくなります。
例外は図の横に箇条書きで書きます。
※ A社だけ様式が違う(総務で直してから流す)
※ 月末が土日のときは前倒し
※ 部長不在時は次長が代理承認
図は主流だけ。例外は文字。この分け方をすると、両方が読めるようになります。
例外の箇条書きが20個を超えたら、それは「例外が多い」のではなく ルールが複数ある ということです。その場合は図を分けます(通常フローと、A社向けフローを別々に)。1枚に詰め込もうとして読めなくなるのが、いちばんよくある失敗です。
道具は何でもいい
専用ツールは要りません。PowerPoint でも、紙に手書きして写真を撮るのでも構いません。
むしろ手書きのほうがいいことがあります。きれいに描けないので、細かいところを描き込もうとしなくなるからです。
現状の図と、あるべき姿の図
もうひとつ、よくある落とし穴です。
「現状(As-Is)を書いて、あるべき姿(To-Be)を書きましょう」——これも正しいのですが、現状の図に完璧を求めると、そこで終わります。
現実的なのは、
- 現状を、30分で、粗く書く(完璧にしない)
- その場で「ここが二度手間」「ここで止まる」に印を付ける
- 印の付いたところだけ、あるべき姿を書く
全体のあるべき姿は書かなくていいです。変えるところだけ描く。全体を描くと、変えない部分を描く時間のほうが長くなります。
図を書いたあとに、必ずやること
書いて満足して終わるのが最大の失敗なので、これだけは決めておいてください。
- その図を見て、次に何をするかを1つ決める
- 決めたことを、その場でカレンダーに入れる
- 図は捨てない。変えたら直す(直さない図は、半年で嘘になります)
図は成果物ではなく、話をするための道具です。話が済んだら、役目は終わっているくらいの気持ちで書くほうが、うまくいきます。
まとめ
- 3人以下・1部署で完結・変えたいのが作業1つ なら、図は要らない。1行で足りる
- 要るのは、部署をまたぐ・二度手間を見せたい・分岐が複雑・外に見積りを頼むとき
- 記号は四角・ひし形・矢印の3つ。部署を縦に並べる
- 例外は図に描かず、横に箇条書き。20個を超えたら図を分ける
- 現状は30分で粗く。あるべき姿は変えるところだけ
- 書いたら次にやることを1つ決めて、カレンダーに入れる
「うちは図が要る状態か」を判断するところからでも構いません。関係する部署の数と、変えたい作業の範囲が分かれば、その場で答えられます。
この記事で使うシートを配っています
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「どの業務から手をつけるか」を決めるためのシートです。作業を書き出して時間・回数・重要度・判断の有無を埋めると、優先度が自動で並びます。実際の打ち合わせで使っているものをそのまま置いています。
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「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。