- 社員名簿が、人事・総務・情シスにそれぞれある
- 取引先一覧が、営業・経理・購買にそれぞれある
- 商品マスタが、営業用と製造用と経理用で少しずつ違う
どれも「うちだけかも」と言われますが、ほとんどの会社で起きています。そして、どれも少しずつ違う。誰かが「正しいのはどれですか」と聞くと、誰も答えられません。
なぜ3か所になるか
責める話ではないので、先に構造を書きます。
それぞれが、違う目的で持っているからです。
| 誰が | 何のために | 必要な項目 |
|---|---|---|
| 人事 | 労務・給与 | 生年月日、入社日、雇用形態 |
| 総務 | 連絡・座席・備品 | 内線、座席、貸与品 |
| 情シス | アカウント・権限 | メール、端末、権限グループ |
同じ「社員名簿」でも、必要な項目が違う。だから、それぞれが自分用に作ります。ここまでは自然な流れです。
問題は、共通する部分(氏名、所属)まで別々に管理していて、更新のタイミングがずれることです。異動があると、人事は直すけれど情シスは1週間後、総務は忘れる。
やってはいけないこと:全部を1つに統合する
いちばんよくある失敗が、「じゃあ全部まとめて1つの完璧なマスタを作りましょう」です。
これは、まず失敗します。
- 全部署の項目を足すと、列が50個を超える
- 「この項目は誰が入れるのか」で止まる
- 見せてはいけない項目(給与、評価)が混ざるので、権限設計が重くなる
- 誰も自分の目的に合わなくなり、結局それぞれが手元でコピーを作る
統合は目的ではありません。目的は「氏名と所属が全部で一致していること」です。そこだけ解けばいい。
やること:1つを「正」に決めて、残りはそこから作る
順番はこうです。
1. 共通部分だけを決める
まず、どの部署も持っている項目を洗い出します。社員なら、
- 社員番号
- 氏名
- 所属
- 在籍状況(在籍/休職/退職)
これだけです。4項目。ここから増やさないでください。増やした瞬間に「誰が入れるのか」問題が発生します。
2. 「正」を1つ決める
上の4項目について、どこが正しいかを1つに決めます。
社員なら人事、取引先なら経理(請求先が正しい必要があるので)、商品なら販売管理システム——というのが多いですが、大事なのは「決めること」であって、どこを選ぶかではありません。
決めるときの基準は、いちばん早く情報が入る場所です。異動情報は人事に最初に入ります。だから人事が正。
3. 残りは、そこから作る
各部署は、共通4項目を正から取ってきて、自分用の項目を足す形にします。
人事の名簿(正)
↓ 社員番号・氏名・所属・在籍状況
総務の名簿(+内線、座席、貸与品)
情シスの名簿(+メール、端末、権限)
取ってくる方法は、要件次第で選びます。
- 月1回、CSVをもらって貼り替える(いちばん簡単。まずこれで足りることが多い)
- SharePointリストに正を置いて、各部署はそれを参照する
- Power Automate で、正が変わったら各部署のリストに反映する
最初から自動にしなくていいです。月1回の貼り替えでも、3か所がバラバラな今よりはるかにマシです。
正に決めた部署に、「あなたのところが正です」と伝えること。これを言わないと、その部署は自分が正だと知らないまま、今までどおり雑に管理します。正になるということは、責任が増えるということなので、そこは合意が要ります。
4. 表記のゆれを、その場で潰す
寄せるときに必ず出るのが表記のゆれです。
| ゆれる項目 | 決めること |
|---|---|
| 会社名 | 「株式会社」を前か後か、(株)を使うか |
| 部署名 | 正式名称か略称か。「営業部」と「営業本部」 |
| 氏名 | 姓名の間にスペースを入れるか。旧姓の扱い |
| 社員番号 | 前ゼロを付けるか(00123 と 123) |
社員番号や取引先コードの前ゼロは、Excelで開くと消えます。これが原因で突き合わせが失敗するのは定番なので、扱いを決めておいてください(文字列として持つ、など)。
取引先マスタの場合の注意
社員より厄介です。
- 同じ会社が2件登録されている(表記ゆれ、支店ごとの登録)
- 請求先と納品先が違う(1社に複数の住所がある)
- 過去に取引があって、今は無い会社が混ざっている
やることは同じですが、共通項目に「取引先コード」を必ず入れるのがポイントです。名前で突き合わせようとすると、表記ゆれで必ず崩れます。コードで突き合わせる。コードが無いなら、この機会に振ってください。
まとめ
- 3か所に分かれるのは目的が違うから。それ自体は自然
- 全部を1つに統合しない。列が増えて、権限が重くなって、誰も使わなくなる
- 決めるのは共通する4項目だけ(コード/名称/所属や区分/有効か)
- 「正」を1つ決める。基準は「いちばん早く情報が入る場所」
- 残りは正から取ってきて、自分用の項目を足す。月1回のCSV貼り替えで十分から始める
- 正に決めた部署に、正であることを伝えて合意を取る
- 突き合わせは名前ではなくコードで。前ゼロの扱いを決める
「うちの場合どこを正にすべきか」から一緒に考えることもできます。今どこに何があるかを書き出すところから始めると、話が早いです。
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