「同じ内容で3社に聞いたら、30万・80万・200万と返ってきた。何が違うんですか」
だいたいの場合、業者の差ではなく、各社が想像した中身の差です。
情報が足りない見積りを出すとき、出す側は「たぶんこういうことだろう」で埋めます。慎重な会社は最大値で埋め、強気な会社は最小値で埋めます。3倍違うのは、その差です。
そして困るのは、安いほうを選んだあとで追加費用が出ることです。最初から入っていなかったので、追加は正当です。誰も悪くないのに揉めます。
これを潰すのは、依頼側でできます。5つ決めるだけです。
1. 使う人が何人で、誰か
「社内で使います」だけだと、想像の幅が広すぎます。
- 5人が同じ部署で使う
- 200人が全社で使う
- 社外の取引先も入力する
この3つは、同じ機能でも別物です。人数が増えると権限設計・同時利用・教育が要り、社外が入ると認証とセキュリティの話が乗ります。
人数と、社外の人が触るかどうか。この2つは必ず書いてください。金額のブレがいちばん大きいのがここです。
2. 元のデータが今どこにあるか
- Excel(何ファイル・何行くらいか)
- 紙
- 既存の社内システム(名前と、データを取り出せるかどうか)
- 複数に分かれている
「既存システムとつなぎたい」が入ると、金額は跳ねます。つなげるかどうかを調べる工数が先に発生し、つなげないと分かることもあるからです。
ここで書いておくと効くのは、「つながらなければCSVの受け渡しでも構わない」かどうかです。これが許されるなら、多くの場合ぐっと安くなります。
3. 承認や判断が、いくつ入るか
入力して保存するだけのものと、承認が3段あるものでは、作る量がまるで違います。
書いてほしいのは、
- 承認の段数
- 差し戻しがあるか
- 金額や内容で分岐するか(例:10万円以上は部長も承認)
- 代理承認が要るか(不在時に誰が押すか)
最後の「代理承認」は、見積り段階では出てこないのに、作りはじめると必ず出てくる項目です。先に書いておくと、後出しの追加費用になりません。
代理承認、期限切れの自動督促、過去データの移行、帳票の印刷レイアウト、スマートフォン対応。この5つは「当然入っていると思った」と「聞いていない」がぶつかりやすい定番です。要る/要らないを先に書くだけで、揉めごとが減ります。
4. いつまでに、なぜその日か
「なるべく早く」は情報がゼロです。書くなら理由まで書きます。
- 4月の組織変更に間に合わせたい
- 今の担当者が9月で退職する
- 特に期限はない
理由が書いてあると、間に合わないときに代案が出せます。「全部は無理ですが、入力部分だけなら4月に間に合います」といった提案は、理由を知らないとできません。
期限がないなら「ない」と書いてください。急がせないだけで安くなることがあります。
5. 作ったあと、誰が直すか
これは金額そのものより、作り方を変えます。
- 自分たちで直したい → 分かりやすさ優先。手順書と引き継ぎの時間が要る
- 外部に任せる → 凝った作りにできる。そのかわり毎回費用がかかる
どちらが正しいということはありません。決まっていないことが問題です。決まっていないと、見積りには「保守運用は別途」と書かれ、そのまま曖昧になります。
逆に、依頼側が書かなくていいこと
ここも大事なので書いておきます。
- 画面のデザイン案(先に固めると、かえって作りにくくなります)
- 使うツールの指定(Power Apps でも kintone でも、目的が達成できればいい。指定すると選択肢が減るだけ)
- 細かい機能の一覧(「こういう機能が欲しい」ではなく「こう困っている」のほうが良い提案が返ってきます)
症状を書いてください。処方は向こうの仕事です。
1枚にまとめたテンプレを置いています
上の5項目を埋めるだけのシートを、資料室に置いています。登録は要りません。
これを埋めて渡すと、どこの会社に頼むにしても見積りの精度が上がります。うち以外に出してもらって構いません。むしろ複数社に同じものを渡してもらったほうが、比較として正しくなります。
まとめ
- 見積りが3倍違うのは、各社が想像で埋めた中身の差
- 依頼側で決めておけるのは5つ。人数と社外の有無/元データの場所/承認の段数/期限とその理由/あとで誰が直すか
- 代理承認・督促・データ移行・印刷・スマホ対応は、後から揉めやすい定番。先に要否を書く
- デザイン案・ツール指定・機能一覧は書かなくていい。症状を書けば足ります
埋めてみて「そもそもこれ、作るべきなんだろうか」となったら、それも含めて相談してください。作らない結論になることもあります。
この記事で使うシートを配っています
開発依頼まとめシート
業務アプリを外に頼むとき、これを埋めて渡すと見積りのブレが小さくなります。人数・元データ・承認の段数・期限・あとで誰が直すかの5項目に、後から揉めやすい定番の要否チェックを足した1枚です。
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