内製化を進めるとき、必ず「まず研修をやりましょう」という話になります。
そして多くの場合、こうなります。研修は好評だったのに、翌週から誰も作らない。
原因は講師の質でも受講者のやる気でもなく、内容の設計です。機能を網羅する研修は、受けている間は分かった気になりますが、いざ自分の業務に向き合うと「どこから手をつければいいか分からない」で止まります。
教えないもの
先にこちらを決めるほうが早いです。1回目には要りません。
- 機能の一覧。「こんなことができます」は、できることが多すぎて逆に選べなくなります
- 関数の網羅。必要になったときに調べれば足ります
- データベース設計の理論。最初はSharePointリスト1本で足ります
- ライセンス体系の全体像。「Microsoft 365 の範囲で作る」とだけ決めておけば、最初は困りません
- きれいな画面の作り方。見た目を整えるのは、動いてからで構いません
これらを削ると、内容が半分以下になります。半分以下になって、はじめて1日に収まります。
教えるもの
代わりに入れるのは、この4つです。
1. 題材の選び方(ここに時間を使う)
いちばん大事なのに、いちばん飛ばされます。
- 自分(かすぐ隣の人)が困っていること
- 関係者3人以下
- 判断が入らない
- 止まってもその日は困らない
この条件と、なぜその条件なのかを説明します。そして、その場で各自に題材を決めてもらう。決まらない人がいたら、そこを一緒に考える時間を取ります。詳しくは Power Apps で最初に作るなら、何がいいか に書きました。
2. データを先に決める、という順番
初心者がいちばん詰まるのは、画面を先に作ってしまうことです。
- 何を、何行、どんな型で持つか(SharePointリストの列を決める)
- 1行1件になっているか
- 選択肢列とユーザー列を使う
リストを作ってから画面を作る。この順番を体に入れてもらうだけで、後の手戻りが大幅に減ります。
3. 動くところまでを、1回通す
「リストを作る → アプリを自動生成する → 少し直す → 自分のスマートフォンで開く」。ここまでを、全員が1回やります。
自分のスマートフォンで開けた瞬間が、いちばん効きます。ここで「作れるかもしれない」と思ってもらえるかどうかが、その後を決めます。
4. 詰まったときの調べ方
全部を教えることはできないので、詰まったときにどうするかを教えます。
- エラーメッセージをそのまま検索する
- 公式ドキュメントのどこを見るか
- 生成AIへの聞き方(何を作りたいか+今どうなっているか+エラー文、をセットで貼る)
- 社内で誰に聞くか
最後の「社内で誰に聞くか」を用意しておくのが大事です。聞ける相手がいないと、詰まった時点で終わります。
「次の1週間で何を作るか」を、その場で宣言してもらってください。そして1週間後に集まる日程を、研修の日に決めてしまう。これが無いと、翌週の忙しさで消えます。研修そのものより、この30分の再集合のほうが効きます。
研修より効くもの
正直に言うと、研修は必要条件ですが十分条件ではありません。受けただけでは続きません。
続くかどうかを決めるのは、研修の外にあります。
- 業務時間の中に「作る時間」があるか(週2時間でいい。上司が承知していること)
- 詰まったときに聞ける相手がいるか
- 作ったものが評価されるか(作ったこと自体が、業務として認められるか)
このうち1つめが飛び抜けて効きます。研修に予算をかけるより、週2時間の枠を確保するほうが安くて効く、というのが実感です。詳しくは 内製化が続かない会社と、続く会社の違い に書きました。
人数と進め方
- 1回あたり5〜8人。それ以上だと、詰まった人を拾えません
- 1日、あるいは半日×2回。半日×2回のほうが、間に自分でやる時間ができるので定着しやすい
- 全社から集めるより、同じ部署から複数人のほうがいい。帰ってから相談できます
最後の点は見落とされがちです。1人だけ研修に出しても、帰ってから孤立します。2人以上を同じ部署から出すのが、続けるコツです。
まとめ
- 教えないもの:機能一覧・関数の網羅・DB設計の理論・ライセンス体系・見た目の作り込み
- 教えるもの:題材の選び方/データを先に決める順番/動くまでを1回通す/詰まったときの調べ方
- 研修の最後に「次の1週間で何を作るか」を宣言させ、1週間後の再集合をその場で決める
- 研修より効くのは、週2時間の枠・聞ける相手・作ったことが評価されること
- 同じ部署から2人以上出す。1人だと帰ってから孤立する
研修そのものより、その前後の設計のほうが結果を左右します。「うちの場合どう組むか」から一緒に考えることもできます。まずは今の状況を聞かせてください。
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「どの業務から手をつけるか」を決めるためのシートです。作業を書き出して時間・回数・重要度・判断の有無を埋めると、優先度が自動で並びます。実際の打ち合わせで使っているものをそのまま置いています。
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OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。