複数社のデモを見た。どれも良さそうに見えた。そして選べない。
これは判断力の問題ではありません。デモは、うまくいく道筋だけを通るように作られているからです。悪意ではなく、限られた時間で良さを伝えるには当然そうなります。
だから、同じものを見ている限り差は出ません。こちらから、見せてもらう場面を指定するのが早いです。
指定する場面1:うちのデータを入れたところ
いちばん効きます。
- 自社の実際のデータ(数十件でいい。個人情報はマスクして)を渡して、取り込んでもらう
- そのうえで、いつも見ている画面を出してもらう
ここで差がはっきり出ます。
- 項目が足りない、桁が入らない、選択肢に無い値がある
- 取り込みに前処理が必要だと言われる(=運用が1つ増える)
- 「カスタマイズで対応できます」と言われる(=追加費用の可能性)
サンプルデータのデモは、どの製品もきれいに動きます。自社のデータを入れた瞬間に、現実が見えます。
指定する場面2:間違えたときと、例外のとき
デモは成功する道筋しか通りません。だから、失敗させてください。
- 入力を間違えたときにどうなるか(エラーの出方、直しやすさ)
- 承認を差し戻すところ(理由を書けるか、前の入力が残るか)
- 承認者が不在のとき(代理承認ができるか)
- 締め日を過ぎてから出てきたものをどう扱うか
- 過去のデータを直したいとき(履歴は残るか、直せる人は誰か)
差し戻しと代理承認は、紙の申請書をやめるとき にも書きましたが、あとから「聞いていない」になりやすい定番です。デモの場で見ておくと確実です。
指定する場面3:管理する側の画面
利用者の画面はどこも作り込まれています。管理者の画面は、そうでもないことがあります。
- 項目を1つ足すところを、その場でやってもらう(何分かかるか、専門知識が要るか)
- 選択肢(部署一覧など)を追加するところ
- 権限を設定するところ
- データをまとめて取り出すところ(CSVやExcelで出せるか)
最後が重要です。データを出せない製品は、乗り換えるときに詰みます。「出せます」と言われたら、その場で出してもらって中身を見せてもらってください。
そして「項目を足す」を見せてもらうのは、自分たちで直せるかどうかの判定になります。ここでベンダーに依頼が必要なら、毎回費用が発生します。
「できます」と「今やってみせられます」は違います。できると言われた機能は、その場で操作してもらってください。時間の都合で難しければ、後日でも構いません。実際に見せられないものは、要件を詰めていくと「開発が必要」になることがあります。
一緒に確認しておくこと
デモの前後で、これも聞いておくと後が楽です。
| 項目 | 聞き方 |
|---|---|
| 費用の構造 | 初期/月額/人数課金か/データ量で変わるか/サポートは別か |
| 増える人数 | 「あと10人増えたら、いくらになりますか」 |
| やめるとき | データはどの形式で返してもらえますか。返却後の削除は? |
| バージョンアップ | 勝手に画面が変わりますか。事前に知らされますか |
| サポート | 何時から何時まで。返答はどのくらいで来るか |
| 導入の期間 | 定着まで含めて何か月か(導入だけの期間ではなく) |
「あと10人増えたら」は、費用構造がいちばん分かりやすく出る質問です。人数課金だと、成功して人が増えるほど高くなります。
参考になる人の話の聞き方
「導入事例を見せてください」は、良い事例しか出てきません。聞くならこう聞きます。
- 同じ規模・同じ業種の会社はありますか
- その会社で、導入後に苦労した点は何でしたか
- やめた会社はありますか。理由は聞いていますか
3つめは答えにくい質問ですが、答え方に人柄が出ます。「あります。理由はこうでした」と言える相手のほうが、たいてい信用できます。
デモの前にやっておくこと
最後に、順番の話です。
デモを見る前に、依頼内容を固めておいてください。固まっていない状態でデモを見ると、見た機能に引っ張られて要件が決まってしまいます。
- 何人が使うか、社外の人は入るか
- 元データはどこにあるか
- 承認は何段か。代理承認は要るか
- いつまでに、なぜその日か
- 作ったあと、誰が直すか
これは 業務アプリの見積りが読めないのは、たぶん依頼側の準備が足りていない と同じ項目です。資料室に1枚のシートを置いてあるので、埋めてから見に行くと、デモの見え方が変わります。
まとめ
- デモはうまくいく道筋しか通らない。同じものを見ても差は出ない
- 指定する場面は3つ。自社データを入れたところ/間違えたときと例外/管理者の画面
- 管理者の画面では、項目を足す・データをまとめて出すを必ずやってもらう
- 「できます」ではなく「今やってみせられます」を確認する
- 費用は「あと10人増えたら」で構造が見える
- やめた会社の理由を聞く。答え方に人柄が出る
- そして、デモの前に依頼内容を固める。機能に引っ張られなくなる
比較の観点を整理するところからでも構いません。うちを候補に入れるかどうかとは別に、判断材料は揃えられます。
この記事で使うシートを配っています
開発依頼まとめシート
業務アプリを外に頼むとき、これを埋めて渡すと見積りのブレが小さくなります。人数・元データ・承認の段数・期限・あとで誰が直すかの5項目に、後から揉めやすい定番の要否チェックを足した1枚です。
ダウンロード(無料・登録不要)読んだうえで「うちの場合はどうか」を話したい方へ
OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。