「生成AIを使いたいが、社内ルールが無いので止まっている」
これもよく聞きます。そして、多くの場合ルールを作る作業そのものが重くなって止まります。他社の規程を参考にすると10ページになり、10ページのものは誰も読みません。
A4一枚で足ります。というより、一枚に収まらないルールは守られません。
ルールを作る前に、現実を確認する
まず、これは押さえておいてください。ルールが無い状態は「使われていない状態」ではありません。
個人のスマートフォンから、個人のアカウントで、すでに使われています。禁止しても、見えなくなるだけです。
なので、ルールの目的は「使わせないこと」ではなく、「危ないところだけ避けて、見えるところで使ってもらうこと」になります。ここを外すと、書いても機能しません。
決めるのは3つだけ
1. 何を入れてはいけないか(これがいちばん大事)
禁止事項を細かく並べるより、入れてはいけない情報を4つに絞るほうが覚えられます。
- 顧客・取引先の名前や個人が特定できる情報
- 未公開の数字(売上、原価、見積り、人事情報)
- パスワードや鍵、社外秘の資料そのもの
- 契約で守秘義務がかかっているもの
「判断に迷ったら入れない」の一行を添えます。
2. どのツールを使ってよいか
これは会社によって答えが違いますが、決め方は共通です。
- 会社が契約したものは自由に使ってよい
- 個人アカウントの無料版は、社内の情報を入れない用途に限る(一般的な調べもの、文章の言い回しを直す、など)
- 新しいツールを業務で使いたいときは、使う前に情シスに一報
会社契約のものと個人アカウントを分けるのがポイントです。理由は、契約したサービスは入力内容の扱い(学習に使われるか等)が契約で決まっているからです。無料版は、その保証がないことがあります。
3. 出てきたものをどう扱うか
- 生成された文章・コードは、必ず人が確認してから使う
- 事実関係(数字、日付、法令、社名)は必ず裏を取る
- 社外に出す成果物にそのまま使わない
- 生成物を「誰が確認したか」が分かるようにする(責任の所在)
「AIが言っていたので」は理由になりません、の一行を入れておくと分かりやすいです。
「全面禁止」は、いちばん簡単で、いちばん効かない選択です。使われ方が見えなくなるだけで、リスクは減りません。会社が契約したツールを1つ用意して、そこに寄せるほうが、はるかにリスクは下がります。ライセンス費用は、統制のための費用でもあります。
そのまま使える文面
このくらいの粒度で足ります。
生成AI利用の手引き(第1版)
■ 使ってよいもの
・会社契約の〇〇(Microsoft 365 Copilot など)… 業務で自由に使えます
・個人アカウントの無料サービス … 社内情報を入れない用途に限ります
・上記以外を業務で使いたいときは、使う前に情シスへ一報ください
■ 入れてはいけない情報
・顧客や取引先の名前、個人が特定できる情報
・未公開の数字(売上、原価、見積り、人事)
・パスワード、鍵、社外秘の資料そのもの
・契約で守秘義務がかかっているもの
→ 迷ったら入れない。迷ったこと自体を情シスに教えてください
■ 出てきたものの扱い
・そのまま使わず、必ず人が確認する
・数字・日付・法令・社名は裏を取る
・社外に出す成果物は、確認した人の名前が分かるようにする
→「AIが言っていたので」は理由になりません
■ 困ったとき
・入れてはいけない情報を入れてしまった → 隠さず情シスへ。早いほど手が打てます
・使い方が分からない → 〇〇(相談先)へ
(第1版・2026年〇月〇日)
最後の「入れてしまったら隠さず言う」が効きます。責める運用にすると報告が来なくなり、対処が遅れます。
版を切って、見直す前提にする
「第1版」と書いてあることに意味があります。
生成AIまわりは、ツールも契約形態も1年で変わります。完璧なものを作ろうとすると出せません。7割で出して、半年に1回見直す。見直す日を決めておけば、それで十分に回ります。
同じ考え方は Power Apps で最初に作るなら にも書きましたが、7割で出して使いながら直すほうが、結果的にいいものになります。
ルールができたら、次は使ってもらう番
ルールを配っただけでは使われません。むしろ、ルールだけ配ると「なんとなく面倒そう」で誰も触らなくなります。
配ると同時に、使い方の実例を出す必要があります。その進め方は Copilot を入れたのに使われない、を防ぐ最初の30日 に書きました。
まとめ
- ルールが無い状態は「使われていない状態」ではない。禁止しても見えなくなるだけ
- 決めるのは3つ。入れてはいけない情報/使ってよいツール/出てきたものの扱い
- 入れてはいけない情報は4つに絞る。「迷ったら入れない」を添える
- 会社契約のツールを1つ用意して、そこに寄せるのがいちばんリスクが下がる
- 「入れてしまったら隠さず言う」を明記する。責めると報告が来なくなる
- A4一枚・第1版で出す。半年に1回見直す
社内で通しやすい形に整えるところからでも構いません。業種や契約状況で書き方が変わるところがあるので、そのあたりを聞かせてもらえれば具体的にできます。
この記事で使うシートを配っています
生成AI利用の手引き(A4一枚のひな形)
社内で生成AIを使うときの約束を、A4一枚にまとめたひな形です。使ってよいもの/入れてはいけない情報/出てきたものの扱い/困ったとき、の4項目だけ。空欄を埋めれば第1版として配れます。
ダウンロード(無料・登録不要)読んだうえで「うちの場合はどうか」を話したい方へ
OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。