- 停電や災害でシステムが止まったら、何が起きるか考えたことがない
- BCPを作れと言われたが、何を書けばいいか分からない
- 取引先から事業継続の体制を聞かれた
- サーバーが事務所にあり、そこが被災したら終わりだと分かっている
立派な計画書を作る話ではありません。分厚いBCPは、作った瞬間から誰も読みません。
やるのは2つです。止まったときに何ができなくなるかを1枚に書く。そのうち、いちばん困る1つか2つだけ手当てする。それで十分に違います。
1枚に書くこと
表を1つ作ります。列は5つです。
| 業務 | 使っているもの | 止まると | いつまでに戻す必要があるか | 止まっている間どうするか |
|---|---|---|---|---|
| 受注 | 販売管理システム | 注文を受けられない | 半日 | FAXと電話で受けて、紙に記録 |
| 出荷 | 在庫システム、プリンタ | 伝票が出せない | 半日 | 手書きの納品書を使う |
| 給与 | 給与システム | 支給が遅れる | 数日 | 前月と同額で仮払い |
| 請求 | 会計システム | 請求が遅れる | 数日 | 翌月にまとめる |
| 社内連絡 | Teams、メール | 連絡が取れない | 即時 | 電話、個人の連絡先一覧 |
4列目と5列目が肝心です。
- いつまでに戻す必要があるか(全部「すぐ」にすると、備えが青天井になります)
- 止まっている間どうするか(ここが書けていれば、当面は動けます)
5列目は、多くの場合お金がかかりません。手書きの様式を用意しておく、連絡先の一覧を紙で持っておく。これだけで、止まった数時間を乗り切れます。
この表と、記入例・判断する人を決めるシートを資料室に置いてあります。埋めるところから始めてください。
半日止まっても実害が小さい業務は、けっこうあります。全部を最優先にすると、何から手をつけるか決められません。受注と、人の安否確認が最優先になる会社が多いです。そこから決めてください。
手当ての優先順位
1枚が書けたら、上から3つだけ手を打ちます。
1. データが失われないこと(最優先)
建物が使えなくなっても、データが残っていれば会社は再開できます。逆はできません。
- バックアップが同じ建物の中だけにないか
- クラウドに同期しているだけの場合、それはバックアップではありません(消したら消えます、暗号化されたら一緒にやられます)
- 復旧を一度試したことがあるか
3番目が抜けがちです。やったことのない復旧は、本番でできません(バックアップは「クラウドだから大丈夫」でいいのか)。
2. 連絡が取れること
災害時にまず必要なのは、システムではなく人と連絡が取れることです。
- 全員の個人の連絡先(会社支給の電話が使えない前提で)
- 紙でも持っている(スマホが使えない、充電が切れる)
- 安否確認の方法と、集約する人
紙で持つが大事です。連絡先がクラウドにしかないと、そこにアクセスできないときに詰みます。
3. 事務所が使えないときに、仕事ができること
コロナ以降、ここは多くの会社で進みました。すでにできているかを確認するだけかもしれません。
- 社外から、必要なシステムにアクセスできるか
- ノートPCが人数分あるか(デスクトップだけだと持ち出せません)
- 家からアクセスするときの手順が、周知されているか
一度、実際に自宅から接続してもらってください。「できるはず」と「できた」は違います(在宅とオフィスが混ざって業務が止まる)。
サーバーが事務所にある場合
これが最大の弱点になります。ただし、すぐにクラウドへ移せるとは限りません。
段階を分けてください。
| 段階 | やること | 費用 |
|---|---|---|
| 今日 | バックアップを事務所の外に(外付けHDDを持ち帰る、クラウドバックアップ) | ほぼゼロ〜少額 |
| 半年 | 停電対策(UPS)、サーバー室の水濡れ・転倒の確認 | 小 |
| 数年 | クラウドへの移行、またはデータセンターへ | 大 |
今日の行だけでも、被害の大きさがまったく変わります。移行は予算と時期の話なので、それを待たずに1行目をやってください。
取引先から聞かれたときのために
「事業継続の体制を教えてほしい」という照会が増えています。書ける材料を作っておくと、そのまま社内の整理にもなります。
答えるのは、この5つで足ります。
- 主要な業務が止まったときの復旧目標時間
- バックアップの方式と、復旧を試した日
- 代替手段(止まっている間どうするか)
- 連絡体制(誰が判断し、誰が連絡するか)
- 見直しの頻度
やっていないことは「未対応」と書いてください。盛ると、あとで確認されたときに困ります。
判断する人を決めておく
計画に書き忘れられるのが、「誰が決めるか」です。
- 事業を止める・再開するの判断
- 取引先への連絡の判断
- 費用が発生する対応(機材の緊急調達など)の判断
- その人が連絡つかないときの、次の人
最後の1行を必ず書いてください。判断者が被災している可能性があります。
年に1回、5分だけ見直す
分厚い計画は更新されませんが、1枚なら見直せます。
- 使っているシステムが変わっていないか
- 連絡先の一覧が古くなっていないか
- 人が入れ替わっていないか
防災訓練の日にセットにすると、忘れません。
まとめ
- 分厚い計画書は要らない。1枚の表から
- 列は業務/使っているもの/止まると/いつまでに/その間どうするか
- 「いつまでに」を全部すぐにしない
- その間どうするかは、たいてい費用ゼロで書ける
- 最優先はデータが失われないこと。建物より先
- バックアップが同じ建物の中だけにないか確認する
- 復旧を一度試す
- 次に連絡が取れること。連絡先は紙でも持つ
- 事務所が使えないときに働けるか、実際に自宅から試す
- サーバーが自社にあるなら、今日できるのはバックアップの持ち出し
- 取引先向けに答える5項目を用意する。未対応は未対応と書く
- 判断する人と、その次の人を書く
- 年1回、防災訓練の日に5分見直す
まず、業務を5つ書き出して「止まると何ができなくなるか」を埋めてみてください。それだけで、手をつける場所が見えます。
この記事で使うシートを配っています
業務が止まったときの1枚シート
止まると何ができなくなるか、いつまでに戻す必要があるか、止まっている間どうするかを1枚に書くシートです。「即時・半日」の行と、代替手段が空欄の行に自動で色が付きます。
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