「補助金が使えるうちに、何か入れておきたい」
この相談は、毎年決まった時期に来ます。そして、この言い方で始まった案件はかなりの確率で使われないものが残ります。
補助金の制度そのものは良いものです。問題は、順番が逆になることです。
どの補助金が使えるか、要件は何か、申請の書き方——これは制度の話で、認定支援機関や商工会議所、専門の事業者に相談してください。要件も枠も毎年変わります。この記事は、補助金を使うと決めたあと(あるいは検討中)に、業務側で気をつけることに絞ります。
失敗パターン1:使い道より先に予算がある
通常、順番はこうです。
困っている → 何が要るか決める → 費用を調べる → 予算を取る
補助金が絡むと、これが逆になります。
補助金が出る → 何に使うか探す → 使えそうなものを入れる
この順番だと、「困っていないところ」に道具が入ります。そして使われません。
見分け方は簡単で、「補助金が無かったら、これを入れますか」と自問することです。入れないなら、それは今やることではありません。
補助金はやろうとしていたことを前倒しする道具として使うのが、いちばん外れません。
失敗パターン2:期限に合わせて範囲を決める
補助金には申請期限と、事業の完了期限があります。そして期限は動きません。
すると、こうなります。
- 期限に間に合わせるため、要件を詰めきる前に発注する
- 現場へのヒアリングを飛ばす
- 「とりあえず入れて、運用は後で考える」
運用は後で考えられません。入れたあとに考える余裕がある職場は、そもそもこの相談をしていません。
対処としては、
- 導入だけでなく、定着までを期間に含めて逆算する
- 期限に入りきらないなら、範囲を狭める(機能を減らす。対象部署を減らす)
- 狭めても補助の要件を満たすか、申請の段階で確認しておく
範囲を狭めるのは、諦めることではありません。入れて使われないより、狭くても使われるほうが、次につながります。
失敗パターン3:補助対象になる費用だけで組む
補助の対象になるのは、たいていソフトウェアやハードウェアの購入費です。対象外になりやすいのは、
- 導入後の保守・運用費(月額)
- 社内への教育・研修
- 業務の見直しそのもの
つまり、いちばん定着に効く部分が対象外になりがちです。
ここを自腹で確保しないまま進めると、「道具は入ったが誰も使えない」になります。
なので、申請の前に決めておくこと。
- 導入後1年分の運用費を、自社の予算として確保できるか
- 社内で誰が面倒を見るか(内製化が続かない会社と、続く会社の違い の「週2時間の枠」の話です)
- 教育の時間を、業務時間として取れるか
これが確保できないなら、補助金があっても見送ったほうがいいです。
失敗パターン4:ベンダー主導で品目が決まる
補助金の申請支援をしてくれる事業者は助かる存在ですが、販売する側が申請も手伝う場合は、利益相反があることを意識しておく必要があります。
悪意があるという話ではなく、構造の話です。売る側は、自社が売れるものを提案します。
対処としては、
- 同じ要件で、複数社から見積りを取る(補助金の要件で相見積りが必須のこともあります)
- 要件は自分で書く。書き方は 業務アプリの見積りが読めないのは と、資料室の開発依頼まとめシートを使ってください
- 「補助金が通りやすい構成」と「自社に必要な構成」が一致しているかを確認する
依頼内容を自分で固めてから相談に行くと、この問題はかなり減ります。
失敗パターン5:入れた後の報告で終わる
補助金には実績報告があります。報告が終わると、そこで気が抜けます。
実際に効果が出るのは報告のあとなので、ここで止まると何も残りません。
決めておくこと。
- 報告の3か月後に、使われているかを確認する日を決める
- 使われていないなら、なぜかを聞く(機能が足りないのか、教育が足りないのか、そもそも要らなかったのか)
- 次の一手を決める
入れたものが使われていないと分かること自体に価値があります。そこから次が決まります。
補助金を使うと決めたら、申請前に決めておくこと
まとめると、この5つです。
- 補助金が無くてもこれを入れるか(入れないなら見送る)
- 定着までを含めた期間で逆算しているか。入らないなら範囲を狭める
- 運用費1年分と、面倒を見る人と、教育の時間を自社で確保できるか
- 要件を自分で書いて、複数社から見積りを取っているか
- 報告の3か月後に、使われているかを確認する日を決めたか
これを埋めてから申請すると、通ったあとが違います。
まとめ
- 補助金はやろうとしていたことを前倒しする道具。使い道を探す道具ではない
- 期限に合わせて要件を飛ばさない。入らないなら範囲を狭める
- 定着に効く部分(運用・教育・業務の見直し)は補助対象外になりがち。自社で確保する
- 要件は自分で書く。販売する側に書いてもらわない
- 報告の3か月後に確認する日を決める
要件を固めるところからご一緒することもできます。資料室の開発依頼まとめシートは、そのまま複数社への依頼書として使えます(うち以外に出してもらって構いません)。
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