ひとり情シス(あるいは総務との兼務)の方から相談を受けると、状況はだいたい同じです。
- 依頼がメール・電話・立ち話・Teamsからバラバラに来る
- 同じ質問に何度も答えている
- 全部を自分がやっているので、何に時間を使ったか自分でも分からない
- 手が空かないので、本来やるべき整備が進まない
そして「外注する予算はありません」。
この状態から抜けるのに、予算は要りません。順番が要ります。入口を1本にする → 答えを溜める → 判断だけ残す、の3段です。
第1段:依頼の入口を1本にする
いちばん効きます。そして、いちばん抵抗があります。
今は入口が5つくらいあるはずです。それを1つにします。
- Microsoft Forms でも、Teams のチャネルでも、SharePoint リストでも構いません
- 項目は3つまで(何に困っているか/いつまでに/連絡先。所属は自動で取れます)
- フォーム以外で来た依頼は、その場で「ここから出してください」と返す
最後がいちばん大事で、そして続きません。立ち話で頼まれると、つい引き受けてしまう。でも、ここを緩めると入口は5つのままです。
説得の材料としては、こう言うと通りやすいです。
「どこまで進んでいるか、私からも見えるようにしたいので」
管理のためではなく、依頼した側が損をしない仕組みとして説明します。実際そうです。口頭の依頼は忘れられますが、記録された依頼は忘れられません。
「システムが止まっている」ような本当の緊急に、フォームを埋めさせるのは無理です。緊急だけは電話でよい、と明示的に決めておく。抜け道を認めておくと、それ以外を守ってもらいやすくなります。
第2段:答えを溜める
入口が1本になると、同じ質問が何度も来ていることが見えるようになります。ここまでは体感でしたが、記録として見えます。
多い順に上から10個、答えを書き溜めます。
- 1件1ページにする(「PC設定マニュアル」に全部入れない)
- タイトルは、聞かれる言葉にする(「クライアント証明書導入手順」ではなく「社外から社内システムに入れない」)
- 画面写真は最小限。手順は5ステップ以内に収める
置き場所は SharePoint でも Teams のタブでも、社内で見られるところなら何でもいいです。大事なのは、次に同じ質問が来たときにURLを返すことです。「そこに書いてあります」と言えるようになると、体感がかなり変わります。
10個書くのに、たぶん合計で5〜6時間かかります。これは投資として確実に回収できるほうです。
第3段:判断だけ残す
10個溜まったら、ここでようやく自動化の話になります。
来た依頼を種類で分けると、こう分かれるはずです。
| 種類 | どうするか |
|---|---|
| よくある質問 | 自動で回答URLを返す(あるいは依頼者が自分で見つけられるようにする) |
| 定型作業(アカウント作成、権限追加) | 手順を決めて、他の人に渡せる形にする |
| 判断が要るもの(何を買うか、どう直すか) | 自分がやる |
3つめだけが本来の仕事です。1つめと2つめは、仕組みか他の人に渡せます。
1つめは、Copilot Studio でエージェントを作るのが向いています。ただし第2段が終わっていることが条件です。答えが溜まっていない状態でボットを作っても、答えられるものがありません(社内問い合わせをCopilotに任せる前に に書いたとおりです)。
2つめは、手順書を1ページ書いて、総務や各部の誰かに渡す。「権限がないから渡せない」なら、渡せる範囲の権限を用意するところが仕事になります。
やってはいけない順番
逆から入ると失敗します。
- いきなりAIチャットボットを作る → 元の答えが無いので何も答えられない
- いきなり資産管理ツールを入れる → 入力する余裕がないので更新されず、半年で実態と乖離する
- いきなり手順書を全部書く → 何が必要か分からないので、書いても読まれないものが増える
入口を1本にするのが先なのは、それをやらないと「何が多いのか」が分からないからです。分からないまま整備すると、必要ないところを整備することになります。
手が空いたら何をするか、を決めておく
最後にひとつ。これをやらないと、空いた時間はすぐ別の依頼で埋まります。
先に決めておいてください。
- 権限とアカウントの棚卸し
- バックアップが本当に戻せるかの確認
- 退職者のアカウント処理のルール化
- 共有フォルダの整理(ルール3つで止まる)
「時間ができたらやろう」は永遠に来ません。空けた枠に、先に名前を付けておきます。
まとめ
- 順番は 入口を1本にする → 答えを溜める → 判断だけ残す
- 入口の統一は「管理のため」ではなく「依頼した側が損をしないため」と説明する
- 緊急だけは抜け道を明示的に認める
- 答えは1件1ページ、タイトルは聞かれる言葉で。まず多い順に10個
- AIも管理ツールも、答えと記録が溜まってから
- 空いた時間に何をするか、先に決めておく
予算がなくても進む部分がかなりあります。どこから手をつけるかを一緒に見るところからでも構いません。
この記事で使うシートを配っています
業務棚卸しシート
「どの業務から手をつけるか」を決めるためのシートです。作業を書き出して時間・回数・重要度・判断の有無を埋めると、優先度が自動で並びます。実際の打ち合わせで使っているものをそのまま置いています。
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OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。