- 使われているアプリを直したいが、壊すのが怖くて触れない
- 直したら現場から「動かない」と連絡が来て、慌てて戻した
- 「テストしてから」と言われるが、テストする場所がない
- 直す前のバージョンに戻せるのか、自分でも自信がない
怖いのは当然です。本番で直接いじっているからです。逆に言えば、直す場所と使われる場所を分ければ、怖さはほぼ消えます。
環境を3つ用意して、という教科書どおりの話はしません。社員数十人の会社で、今日からやれる範囲で書きます。
まず、戻せる状態を作る(今日やること)
これだけでも、怖さは半分になります。
Power Apps の場合
Power Apps はバージョンを自動で保存しています。
アプリ → 対象のアプリの … → 詳細 → バージョン で一覧が見られ、過去のバージョンに戻せます(復元)。
一度、練習で戻してみてください。やったことがある人と、無い人では、事故のときの動きが全然違います。5分で試せます。
Power Automate の場合
フローも同様に、編集前の状態を保存できます。ただしアプリほど分かりやすくないので、大きく直す前に「名前を付けて保存」でコピーを取る習慣にしてください。
コピー名は 売上通知フロー_20260829_変更前 のように、日付を入れておきます。「コピー」「コピーのコピー」になると、どれが何か分からなくなります。
「壊れたら戻せます」と言えるかどうかで、現場の受け止め方が変わります。直す前に「今日の午後に直します。問題があればすぐ戻します」と一言流しておくと、トラブルが起きても騒ぎになりません。
直す場所を分ける(次にやること)
戻せるようになったら、次は「試す場所」です。
いちばん軽い方法:コピーで直す
- 本番のアプリを
名前を付けて保存でコピー(◯◯アプリ_作業中) - コピーのほうを直す
- 自分と、現場の1人だけに共有して試してもらう
- 問題なければ、本番のアプリに同じ変更を入れる
手で2回直すことになりますが、アプリが数本の規模なら、これがいちばん確実で速いです。環境やソリューションの仕組みを覚えるコストがかかりません。
注意:データは分かれません
コピーしたアプリも、同じデータを見ています。画面の見た目やボタンの動きを試すのは安全ですが、保存や削除を試すと本番のデータが変わります。
対策は2つです。
- テスト用のデータを、分かるように入れる(
【テスト】で始まる名前にして、あとで消す) - SharePointリストなら、テスト用のリストをコピーで作って、そちらを見るようにする
削除の動作を試すときは、必ず後者にしてください。
環境を分けるのは、どこから必要か
Power Platform には「環境」という単位があり、開発用と本番用を分けられます。ただし、これを入れると運用の手数が増えます。
分ける価値が出るのは、次のどれかに当てはまってからです。
- アプリとフローが10本を超えた
- 作る人が複数いて、同時に別のものを直している
- 止まると業務が本当に止まるアプリがある(受注、出荷など)
- 外部の会社にも開発を頼んでいる
数本を1人で作っている段階では、環境を分けないほうが速いです。分けた瞬間に、移す作業(ソリューションのエクスポートとインポート、接続のつなぎ直し)が毎回発生します。
既定の環境(Default)は全員がアクセスできるので、誰かが作ったテスト用のものと混ざります。大事なアプリが3本を超えたら、専用の環境を1つ作って、そこに移すのは早めにやる価値があります。開発用まで作る必要はありません。
直す前に、必ず1つやること
今動いている状態を、記録しておいてください。
- 主要な画面のスクリーンショット(3〜5枚)
- 「この操作をしたら、こうなる」を3行だけメモ
これが無いと、直したあとに「前はどうだったか」が分からなくなります。現場から「前はできたのに」と言われたときに、確認する材料がありません。
5分で済みます。直す前にやってください。あとからは取れません。
現場への出し方
いきなり全員に出さないでください。順番はこうです。
- 自分で一通り触る(よく使う操作を5つ)
- 現場の1人に触ってもらう(いちばんよく使っている人)
- その人がOKなら、全員に出す
- 出した日を記録して、その週は問い合わせに反応できるようにしておく
2番の人を決めておくのが効きます。毎回同じ人に頼めると、その人が「この変更は現場が困る」と先に言ってくれるようになります(現場が新しいやり方を嫌がる)。
金曜の夕方に直さない
これは経験則ですが、確実です。
問題が出るのは、直した直後ではなく、翌営業日の朝です。現場が実際に使い始めたときに出ます。金曜の夕方に直すと、月曜の朝に問い合わせが来て、その日の予定が全部飛びます。
火曜か水曜の午前に直してください。その日のうちに反応が返ってくるので、対応する時間があります。
変更の記録を残す
1行で足ります。台帳の1シートに書き足していくだけです。
2026-08-29 / 経費申請アプリ / 承認者の選択肢に「部長代理」を追加 / 奥田
これがあると、半年後に「いつからこうなった?」を追えます。特に、自分以外の人が引き継ぐときに効きます(引き継ぎ資料が役に立たないのは、書く時期が遅いから)。
自動化ツールの一覧を資料室に置いてあるので、その中の変更履歴のシートを使ってもらっても構いません。
まとめ
- 怖いのは本番を直接いじっているから。分ければ消える
- 今日やること:バージョンから戻す練習を1回する
- フローは大きく直す前に日付入りでコピーを取る
- 試す場所は、アプリのコピーで足りる。環境を分けるのは後
- ただしデータは分かれない。削除を試すならテスト用のリストを作る
- 環境を分けるのは、10本超・複数人・止まると困る・外注ありのどれかから
- 大事なアプリが3本超えたら、既定の環境から出す
- 直す前に今の状態のスクリーンショットと3行のメモ
- 出すのは自分 → 現場の1人 → 全員の順
- 金曜の夕方に直さない。火曜か水曜の午前に
- 変更を1行で記録する
まず、戻す練習からやってください。それができれば、あとは思ったより気楽に直せます。
この記事で使うシートを配っています
自動化ツール一覧(管理台帳)
社内で作った自動化フロー・アプリ・マクロ・RPAを1枚に並べる台帳です。止まると困る度と引き継ぎにくさから、危ない行に自動で色が付きます。
ダウンロード(無料・登録不要)読んだうえで「うちの場合はどうか」を話したい方へ
OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。