- 顧客リストが、営業一人ひとりのExcelにある
- 担当が辞めたとき、その取引先との経緯が誰にも分からなくなった
- 「あの会社、今どうなってる?」に答えられない
- SFAやCRMを入れようとしたが、入力されずに止まった
情報が散らばるのは、営業がだらしないからではありません。入力しても本人に得がないからです。ここを変えないと、どんな仕組みを入れても同じ結果になります。
何のために集めるのかを、先に決める
「顧客管理をしたい」だけでは、何を入れるべきかが決まりません。目的によって、必要なものが変わります。
| 目的 | 集めるべきもの | 入力の重さ |
|---|---|---|
| 担当が辞めても引き継げる | 会社・担当者・過去の取引・直近のやりとり | 軽い |
| 案件の進み具合を把握する | 案件ごとの段階・金額・確度・次の行動 | 中 |
| 予測を立てる | 上に加えて、時期・確度の基準 | 重い |
まず1行目だけでいいです。多くの会社の困りごとは「引き継げない」なので、それが解ければ十分です。2行目3行目は、営業の人数が増えてから考えても遅くありません。
「受注確度80%」のような数字は、入れる側にとって面倒なうえ、根拠が人によって違うので集計しても使えません。最初は入れさせないでください。必要になってから、基準を決めて足します。
入力を増やさずに集める
これが実務のかなめです。営業に新しい入力作業を増やすと、必ず止まります。
1. すでに発生しているものを集める
- メール … 共有のメールボックスで受ければ、やりとりは自動で残ります
- 見積書 … 発行のときに1件登録される形にすれば、案件の記録が自動で増えます
- 請求データ … 会計や販売管理にすでにあります
「取引の事実」は、すでにどこかに記録されています。それを集めるほうが、営業に入力させるより確実です。
2. 入力するのは1つだけにする
どうしても人が入れるものを1つに絞るなら、「次にいつ、何をするか」です。
サクラ商事 / 田中様 / 9月5日に見積の返事をもらう
これだけなら30秒で入ります。そして、入れた本人がいちばん助かります(忘れないため)。本人に得があるものは続きます。
3. 入力の場所を、いつも見ている場所にする
別のシステムを開かせないでください。Teams のタブか、Outlook から開ける場所にあるかどうかで、続くかどうかが決まります。
最小構成は、3つの表です
SFAを買う前に、この形で足りるかを見てください。SharePointリストでも作れます。
表1:会社
会社コード / 会社名 / 業種 / 住所 / 担当営業 / 取引状況(見込み・取引中・休眠)
表2:担当者
担当者ID / 会社コード / 氏名 / 部署 / 役職 / 連絡先 / 退職フラグ
表3:やりとり
日付 / 会社コード / 担当者ID / 種別(訪問・電話・メール) / 内容(3行) / 次の予定
会社コードで結びます。会社名で結ぶと、表記ゆれで結べなくなります(社員名簿や取引先一覧が部署ごとにある)。
表3の「内容」は3行までと決めてください。長く書かせると書かれなくなります。3行なら書きます。
名刺をどうするか
顧客情報の入り口は名刺です。ここが個人の引き出しにあると、他が整いません。
現実的なのは次です。
- もらったらその場でスマホで撮る(名刺管理アプリでも、Formsのアップロードでも)
- 会社名・氏名・部署・メールだけを、表2に登録する
- 現物は本人が持っていて構いません
全部の項目を手入力させると続きません。4項目だけにしてください。
相手先の担当者は変わります。「宛先不明で返ってきた」「もう在籍していない」と分かったら、その場で退職フラグを立てる運用にしてください。消さずに残すのは、過去のやりとりが誰との会話だったか分からなくなるからです。
SFA・CRMを買うべきか
次のどれかに当てはまるなら、買う価値があります。
- 営業が5人以上いて、案件が並行して数十件動いている
- 進み具合を上長が把握する必要がある
- メール・電話・訪問の記録を時系列で見たい
- 見積から受注までの流れをシステムでつなぎたい
逆に、営業が2〜3人で、引き継ぎのために記録を残したいだけなら、SharePointリストで足ります。月額を払う理由がありません。
買う場合の確認点は、電子契約と同じです。データをCSVで取り出せるか。ここが担保されていないと、あとで動けなくなります。
定着させるためにやること
導入して1か月で止まる会社と、続く会社の違いは、はっきりしています。
続く会社がやっていること
- 会議の資料を、その画面に置き換えた(別に資料を作るのをやめた)
- 上長が、その画面を見て質問する(口頭の報告を求めなくなった)
- 入力していない人を責めるのではなく、入力する意味を作った
1番が決定的です。別の場所で報告が完結している限り、システムには入りません。「月曜の朝会は、この画面を開いて話す」と決めてください(毎月の定例報告資料に3日かかっている、を削る)。
やってはいけないこと
- 入力率を出して個人名で比べる(隠されるようになります)
- 項目を増やす(使っていない項目は消してください)
- 「まず全件を入力してから運用開始」(終わりません。動いている案件だけから始める)
過去のデータをどうするか
全部を移そうとしないでください。
- 直近1〜2年で取引のある会社だけを移す
- それ以外は、元のExcelを参照用として残す
移す件数が少ないほど、始まるのが早くなります。休眠先は、動き出したときに登録すれば足ります。
まとめ
- 散らばるのは、入力しても本人に得がないから
- 目的を決める。多くの場合は「引き継げること」で十分
- 確度のような主観の数字を最初から入れさせない
- 入力を増やさず、すでに発生しているもの(メール・見積・請求)を集める
- 人が入れるのは「次にいつ、何をするか」の1つだけ
- 入力の場所は、Teams や Outlook から開けるところに
- 最小構成は会社・担当者・やりとりの3表。コードで結ぶ
- 名刺は4項目だけ登録。現物は本人が持っていてよい
- 営業2〜3人ならSharePointリストで足りる
- 続く条件は、会議をその画面に置き換えること
- 過去データは直近1〜2年だけ移す
まず、いま動いている案件を10件だけ、1つの表に書き出してみてください。それで足りるかどうかが分かります。
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