複数の拠点や支店がある会社で、必ず出てくる話です。
- 同じ業務なのに、拠点ごとに様式が違う
- 締め日が違う。承認の段数も違う
- 本社が集計するとき、毎回直してから集計している
- 「標準化しましょう」と言うと、各拠点から反対が出る
そして、たいてい標準化プロジェクトは途中で止まります。
止まる理由は、全部を揃えようとするからです。揃えないと困るものは、実はそんなに多くありません。
揃えないと困るもの(少数)
本当に揃える必要があるのは、この3つくらいです。
1. 集計に使う項目と、その定義
「売上」が拠点によって違うものを指している——これは実際にあります。税込か税抜か、値引き後か前か、キャンセル分を含むか。
項目の名前ではなく、定義を揃えるのが要点です。様式が違っても、定義が同じなら集計できます。
2. 締め日
これは揃えないと集計できません。数字を出す期限が違うと、全社の数字が出ません。
ただし「拠点内で誰がいつまでに出すか」は揃えなくていい。本社に届く期限だけ揃えれば足ります。
3. コード(取引先・商品・部署)
同じ取引先に拠点ごとに違うコードを振っていると、全社での集計が不可能になります。ここはマスタを1か所に寄せる話と同じで、コードだけは統一する必要があります。
以上です。この3つ以外は、揃えなくても回ります。
揃えなくていいもの
逆に、揃えようとして揉めるわりに効果が薄いのがこちらです。
- 入力の様式・画面の見た目(定義が揃っていれば、見た目は違っていい)
- 拠点内の承認の段数(拠点の規模も体制も違う)
- 使っている道具(Excelでも紙でも、期限までに正しい定義で出てくるなら構わない)
- 作業の手順(結果が同じなら、やり方は現場の裁量でいい)
「全社で同じアプリを使う」を目標にすると、いちばん小さい拠点といちばん大きい拠点の両方に合わない画面ができます。まず定義と締め日とコードだけ揃えて、道具は後から自然に寄せるほうが進みます。
違いには理由があることが多いです。「その地域だけ取引先の要求が違う」「人数が少ないので承認を2段にしている」。聞かずに揃えると、その理由が消えて業務が回らなくなります。理由を聞いたうえで「それは揃えなくていいですね」と言えるのが、いちばんいい形です(現場が新しい仕組みを嫌がるのは、たいてい正しい理由がある)。
進め方
1. 各拠点の現物を集める
議論の前に、実際に使っている様式を全部集めます。3拠点なら3つ、10拠点なら10。
並べると、思ったより似ていることが多いです。項目の8割は共通で、違うのは並び順と名前だけ、というのはよくあります。
2. 項目を突き合わせて、定義を確認する
同じ名前で違うものを指している項目を探します。ここが本命です。
「本社の『受注日』は契約書の日付、A拠点は口頭で決まった日」——こういうものが、集計が合わない原因です。
3. 集計に要る項目だけ、定義を決める
決めたら、各拠点に「この項目だけ、この定義で出してください」と伝えます。様式は変えなくていい、と明言する。
「様式は今のままで構いません」と言えるかどうかで、話の通りやすさが変わります。
4. 締め日を揃える
いちばん反対が出るところです。理由を聞いたうえで、全社の期限から逆算して決めます。
5. 道具は、あとから
ここまでできていれば、共通の入力の仕組みを作るのは難しくありません。むしろ、作らなくても回っていることに気づくかもしれません。
「本社が直してから集計している」を止める
現状、本社の担当者が各拠点の様式を直してから集計している——これが手作業の正体です。
ここは自動化できますが、先に定義を揃えないと自動化できません。様式のゆれは吸収できても、定義のゆれは吸収できないからです。
順番としては、
- 定義を揃える(人の仕事)
- 様式を吸収する仕組みを作る(自動化できる)
2だけやろうとすると、間違った数字が高速で集計されるようになります。
拠点をまたぐときに、もう一つ効くこと
情報の置き場所です。
- 拠点ごとに共有フォルダが独立していて、本社から見えない
- Teamsのチームが拠点ごとにあって、横のやりとりが無い
- 同じ資料が拠点ごとに別々に更新されている
全社共通のものを置く場所を1つ決めるだけで、かなり変わります。規程・様式・手順書は、拠点ごとに持たない。1か所に置いて、全拠点がそこを見る(SharePointのサイトを作りすぎて崩壊しないための、最初の設計)。
まとめ
- 全部を揃えようとすると止まる。揃えないと困るのは3つだけ
- 集計に使う項目の定義/本社に届く締め日/コード(取引先・商品・部署)
- 様式・画面・承認の段数・道具は、揃えなくていい
- 「様式は今のままで構いません」と言えると、話が通りやすくなる
- 違いには理由がある。聞いてから揃える
- 自動化は定義を揃えたあと。先にやると、間違った数字が高速で集まる
- 全社共通の資料は、1か所に置く
現物を集めて突き合わせるところからご一緒できます。並べると、揃えるべき項目は思ったより少ないことが分かるはずです。
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