- 11月に用紙を配って、12月までずっと督促している
- 出てきた紙の8割に、どこか記入漏れか押し間違いがある
- 保険料の控除証明書が、折り目のついた原本で回ってくる
- 拠点が分かれていて、郵送のやりとりが発生する
年末調整がつらいのは計算のせいではありません。紙を集めるところと、間違いを直してもらうところで時間が消えています。
どこで時間が消えているかを、先に数える
来年やる前に、今年の記録を残してください。数字がないと、どこを直すかを決められません。
- 配布してから、最後の1人が出すまでの日数
- 督促した回数(メール・電話・声かけ)
- 差し戻した件数と、その理由の内訳
理由の内訳がいちばん効きます。だいたい次の3つに集中します。
- 書かなくてよい欄を書いている/書くべき欄が空
- 扶養親族の情報(生年月日、続柄、所得の見積額)が違う
- 控除証明書の添付漏れ
1と2は、紙をやめると自動的に減ります。入力のときにチェックできるからです。3は紙をやめても残ります。
全部を一度に変えないでください
年末調整の電子化は、話としては3つに分かれます。
| やること | 難しさ | 効き方 |
|---|---|---|
| 申告書の回収を電子にする | 低い | 督促と差し戻しが減る |
| 控除証明書を電子データで集める | 中 | 添付漏れが減る |
| 計算と給与システムへの取り込みを自動にする | 高い | 総務の入力が減る |
上から順に、1年に1つずつでいいです。いちばん上だけでも、督促の回数はっきり減ります。
回収だけを変える(今年やるならここ)
給与システムに年末調整の機能が付いているなら、それを使うのがいちばん早いです。付いていない場合は、Microsoft Forms と Excel で足ります。
作り方
- Forms でフォームを1つ作る(社員番号・氏名・扶養の有無・各控除の有無)
- 分岐を使う。「配偶者控除の対象がいますか → いいえ」なら、以降の欄を出さない
- ファイルのアップロード欄を付けて、控除証明書の写真をその場で上げてもらう
- 回答は自動でExcelにたまるので、そこから給与システムに転記する
分岐が効きます。紙だと全員が全部の欄を見ることになりますが、フォームなら自分に関係のある欄しか出てきません。記入漏れの大半はこれで消えます。
生年月日は日付形式、所得の見積額は数値、社員番号は桁数チェック。この3つを付けるだけで、差し戻しがかなり減ります。あとで直す時間より、フォームを作る時間のほうがずっと短いです(アンケートや申込みの集計を毎回手でやらない)。
紙を残す人がいてもいい
スマホもPCも使わない社員がいる場合、その人たちだけ紙で受けて、総務が代わりにフォームに入力する形で構いません。全員を一度に移す必要はありません。
「全員が使えないから電子化できない」で止まっている会社が多いですが、8割が電子になれば、残り2割は手で受けても回ります。
控除証明書をどうするか
保険会社の多くは、控除証明書を電子データ(XML)で発行できます。マイナポータル連携でまとめて取得することもできます。
ただし、これは社員側の手続きです。会社から「そうしてください」と言っても、初年度はほとんど動きません。
現実的なのは次の順です。
- 今年は写真でよいことにする(フォームのアップロード欄)
- 案内文に「電子データでも受け付けます」と1行入れておく
- 来年以降、電子データの割合が増えたらそちらに寄せる
写真で受けるだけでも、原本の紛失と返却のやりとりが消えます。ここは効きます。
案内文を作り直す
督促が減らない原因の半分は、案内文が読まれていないことです。
- 期限を件名に入れる(「【11/28まで】年末調整の入力のお願い」)
- やることを最初の3行に書く。制度の説明は下に回す
- リンクは1つだけにする。複数あると、どれを開くか迷って後回しになります
- 「該当がない人も回答が必要」と明記する(これが無いと、対象外の人が黙って何もしません)
制度の説明を先頭に置いた案内は読まれません。読む人が知りたいのは「自分は何をいつまでにするのか」だけです。
督促を人手でやらない
Forms の回答一覧と社員名簿を突き合わせれば、未提出者は自動で出せます。
- Excel で
XLOOKUPを使って、未回答の行を抽出する - 期限の3日前と前日に、その一覧宛にメールを出す
Power Automate を使えば送信まで自動にできますが、年1回の作業なので、一覧を出すところまで自動にして送信は手で押すくらいがちょうどいいです。作り込むほど、翌年動かなくなったときに調べる時間が増えます(作ったフローが急に動かなくなった)。
総務から個人に督促し続けるより、部署ごとの未提出者数を上長に週1で流すほうが速く集まります。人を責めるためではなく、部署の中で声をかけてもらうためです。総務が全員を追いかける構造をやめるのが目的です。
来年の自分に残しておくもの
年末調整は年に1回なので、去年何をしたかを誰も覚えていません。終わった直後に、次の3つを残してください。
- 使ったフォームのURLと、フォームのコピー
- 案内文の本文(そのまま使い回せる形で)
- 差し戻しの理由の内訳(来年どこを直すかの材料)
12月中にやってください。1月になると誰も思い出せません。
まとめ
- つらいのは計算ではなく、集めるところと差し戻し
- 今年の督促回数と差し戻し理由を数える。来年の材料になる
- 電子化は3段階。回収だけを変えるところから
- Forms の分岐で、関係のない欄を出さない。記入漏れの大半が消える
- 控除証明書は、まず写真で受けるだけでも原本のやりとりが消える
- 紙の人が残っていてよい。総務が代わりに入力すれば回る
- 案内文は期限を件名に、やることを最初の3行に。該当なしも回答が必要と明記
- 督促は一覧を自動で出し、部署の上長に流す
11月に慌てないために、9月か10月にフォームを1つ作っておいてください。作るのは2時間もかかりません。
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