入社の準備は、退職の処理と鏡合わせの作業です。そして同じ理由で毎回バタバタします。
- 前日に聞かされる(人事は決まった時点で知っていた)
- 毎回どこか抜ける(メーリングリストへの追加、共有フォルダの権限)
- 初日に本人が「パスワードが分からない」で止まる
- 何をどこまで渡したか、記録が残っていない
原因は担当者の段取りではなく、情報が届く経路と、手順が決まっていないことです。3つ揃えれば安定します。
1. 人事から情報が来る経路(退職と同じ表を使う)
退職者のアカウントが残っている、を仕組みで止める に書いた表を、そのまま入社にも使います。
人事(または総務)が1つの表に入れるのは、この4つ。
- 氏名
- 所属
- 区分(入社/異動/退職)
- 発生日
そして通知を自動にします。
- 入社日の10営業日前に情シスへ通知(端末の手配が要るため、退職より早く知る必要がある)
- 入社日の前日に、準備完了かの確認
- 完了したら、表の状態を「完了」にする
入社は退職より早く知る必要があります。端末の在庫が無ければ発注から始まるので、前日に聞いても間に合いません。
2. チェックリストを1枚
その場で考えると必ず抜けます。1枚にして、毎回コピーして使います。
| 分類 | 項目 |
|---|---|
| 端末 | PC本体、電源、周辺機器、資産番号の登録 |
| 端末 | OS更新、ウイルス対策、暗号化の確認 |
| アカウント | アカウント作成、初期パスワード、多要素認証の登録案内 |
| アカウント | ライセンス割り当て(費用が発生するので、割り当て漏れと二重割り当ての両方に注意) |
| 権限 | 所属のチーム/サイトへの追加 |
| 権限 | 共有フォルダ・リストの権限 |
| 権限 | メーリングリスト、共有メールボックス |
| 業務システム | 使うシステムごとのアカウント(一覧を持っておく) |
| 連絡 | 内線、座席、名簿への追加 |
| 説明 | 初日に渡す案内(下記) |
「業務システムごとのアカウント」の一覧が、いちばん抜けやすいところです。情シス管轄外のSaaSが各部署で使われていることが多いので、部署ごとに「うちで使っているシステム」の一覧を持っておくと、毎回聞かずに済みます。
毎回ゼロから考えるのをやめるには、部署ごとのひな形を作るのが早いです。「営業部の新人に必要なもの一式」「製造部の新人に必要なもの一式」。3〜4種類作れば、ほとんどの入社に対応できます。
3. 初日に本人へ渡す案内(1枚)
ここを用意しておくと、初日の問い合わせが激減します。
書くのは、この5つだけ。
- 自分のアカウントとメールアドレス
- 最初のログインのしかた(初期パスワードの変更、多要素認証の登録)
- 困ったときの連絡先(誰に、どうやって)
- やってはいけないこと(個人アカウントでの業務利用、私物端末での取り扱い、生成AIの扱い)
- 社内の情報がどこにあるか(規程、様式、手順書の場所)
分厚いマニュアルは読まれません。A4一枚。それ以上は初日に読めません。
4番目の生成AIの扱いは、いま入れておくと後が楽です。ひな形は資料室に置いてあります(生成AIの社内ルールを、A4一枚で作る)。
4. できれば:手順を他の人に渡せる形にする
情シスが1人なら、入社準備は他の人に渡せる仕事の筆頭です(ひとり情シスが最初に手放すべき仕事 の「定型作業」に当たります)。
渡すために必要なのは、
- 上のチェックリスト
- 各項目の手順が1ページずつ(画面写真は最小限、5ステップ以内)
- 渡す相手に必要な権限(ここが用意できないと渡せません)
3つめが本丸です。「権限が無いから渡せない」で止まっているなら、渡せる範囲の権限をどう作るかが仕事になります。全権限を渡す必要はなく、「ユーザーの作成とライセンス割り当てだけできる」役割を用意すれば足りることが多いです。
5. 自動化するなら、どこから
全部を自動にする必要はありません。効果が大きい順に。
- 入社予定の通知(表に入ったら情シスに通知)… いちばん簡単で、いちばん効く
- チェックリストの自動作成(入社が登録されたら、タスクの一覧を自動で作る)
- アカウント作成そのものの自動化 … ここは急がなくていい。月に数件なら手作業のほうが安全です
件数が少ないものを自動化しても、あまり得しません。月に1〜2件の入社なら、通知とチェックリストだけ仕組みにして、実作業は手でやるのが現実的です。
まとめ
- 情報が届く経路を作る。入社は退職より早く(10営業日前に)知る必要がある
- チェックリストを1枚。部署ごとの「必要なもの一式」を3〜4種類作っておく
- 業務システムのアカウントがいちばん抜けやすい。部署ごとの一覧を持つ
- 初日に渡す案内をA4一枚。アカウント/ログイン/連絡先/やってはいけないこと/情報の場所
- 渡せる形にするには、手順書と権限が要る。権限を作るところが仕事
- 自動化は通知とチェックリストから。アカウント作成の自動化は急がない
退職の処理と同じ表・同じ考え方で回せるので、片方を作るならもう片方も一緒に作るのが得です。どちらから手をつけるかの相談からでも構いません。
この記事で使うシートを配っています
業務棚卸しシート
「どの業務から手をつけるか」を決めるためのシートです。作業を書き出して時間・回数・重要度・判断の有無を埋めると、優先度が自動で並びます。実際の打ち合わせで使っているものをそのまま置いています。
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