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システム導入の稟議が通らない

「必要です」だけでは通りません。通る稟議には決まった型があります。何と比べるか、いくら助かるか、やめるときどうするか。この3つが書いてあるかどうかです。

読了 約5分 発注DX業務改善
  • 必要だと思って稟議を上げたが、差し戻された
  • 「本当に必要か」「他と比べたか」と聞かれて、答えに詰まった
  • 見積書を添付しただけで出したら、説明を求められた
  • そもそも、何を書けば通るのか分からない

稟議が通らないのは、金額が高いからではありません。決める人が判断できる材料が入っていないからです。判断できないものは、保留になります。

決める人が見ているのは3つだけ

役員が稟議を見るときに気にしているのは、ほぼこれだけです。

  1. これを買わないと、何が起きるのか
  2. 他の選択肢と比べたのか
  3. 失敗したとき、いくら損して、どう畳むのか

技術の説明は求められていません。この3つが書いてあれば、たいてい通ります。

1. 「買わないと何が起きるか」を数字にする

「業務が効率化されます」は通りません。今いくらかかっているかを出してください。

書き方

現状:請求書の作成に、経理2名で月40時間
      時給2,500円換算で、年間 120万円

導入後:月10時間(見込み)
      年間 30万円。差額は年 90万円

時給換算に厳密さは要りません。「これくらいの規模の話です」が伝わればいいからです。むしろ細かすぎると、その数字の議論になって本題が進みません。

金額にならないものは、件数と日数で

すべてが金額に落ちるわけではありません。その場合は次を使います。

  • ミスの件数(月◯件の入力ミス、うち◯件が取引先に迷惑をかけた)
  • 待ち時間(申請から承認まで平均5.2日)
  • 止まったときの影響(受注が止まると1日◯万円)

3番目は効きます。リスクの話は、投資の話より通りやすいからです。

数字が無いなら、先に1か月数える

今の数字が無い状態で稟議を書くと、必ず「本当にそんなにかかっているのか」と聞かれます。1か月だけ、実測してください。担当者に日報の端に時間を書いてもらうだけで足ります。この1か月が、稟議の成否を分けます(業務棚卸しシートを使ってもらっても構いません)。

2. 比較した形跡を残す

1社の見積だけで出すと、まず差し戻されます。「他と比べたのか」という質問が来るからです。

比較の表を1つ入れてください。3案で足ります。

案A(今のまま)案B(既製品)案C(作る)
初期費用0円30万円120万円
年間費用0円24万円12万円
3年総額0円102万円156万円
削減見込み年90万円年110万円
リスク人が辞めると止まる使いこなせない可能性作った人しか直せない

案Aに「今のまま」を必ず入れてください。これがあると、「何もしない」という選択肢もちゃんと検討したことが伝わります。入っていないと、結論ありきに見えます。

3年で見るのがおすすめです。1年だと初期費用が重く見え、5年だと現実味がなくなります。

3. やめるときの話を書く

ここが抜けている稟議が多いです。決める人がいちばん怖いのは、失敗したときに引き返せないことです。

書くのは3行で足ります。

・契約は年単位。合わなければ1年で解約できる
・データはCSVで取り出せる
・止めた場合、元のExcelの運用に戻せる(手順は残す)

引き返せると分かると、決裁は驚くほど楽になります。逆に、5年契約で違約金があり、データが取り出せない、という条件だと、金額が小さくても慎重になります。

小さく始める形にすると、通りやすい

「まず1部署で3か月」「まず10人分のライセンスで」という形にすると、判断の重さが下がります。全社で一気に入れる案しかないと、決める側は全部の責任を負うことになります。段階を提示するのは、決める人への配慮です。

稟議書に入れる項目

型は決まっています。A4で1〜2枚。

  1. 件名(何を、いくらで)
  2. 現状と困っていること(数字で)
  3. 導入するもの(1〜2行。製品名と何をするものか)
  4. 費用(初期/年間/3年総額)
  5. 効果(金額、または件数・日数)
  6. 比較検討(3案の表)
  7. リスクと、やめるときの手順
  8. スケジュール(いつ決めて、いつ始めて、いつ効果が出るか)
  9. 添付(見積書、資料)

長く書かないでください。2枚を超えると読まれません。詳細は添付に回します。

下書き用のひな形を資料室に置いてあります。埋めれば形になります。

通らなかったときに聞くこと

差し戻されたら、何が足りなかったのかを必ず聞いてください。「もう少し検討して」で終わらせると、次も同じ結果になります。

たいてい次のどれかです。

  • 数字が信用されていない → 実測した経緯を書く
  • 今じゃなくてもいい → なぜ今なのかを足す(法令の期限、保守切れ、繁忙期前)
  • 誰が使うのか見えない → 使う部署の同意を先に取る
  • 情シスだけの話に見える → 現場の人の言葉を1つ入れる

最後の1つが効きます。「経理の◯◯さんが、月末に2日残業している」という具体的な事実が1行あるだけで、話の伝わり方が変わります。

補助金を理由にしない

「補助金が使えるうちに」を主な理由にすると、補助金が取れなかったときに全部止まります。

補助金は「あれば助かるもの」として、本文の下のほうに1行書く程度にしてください。その仕組みが必要かどうかは、補助金と関係なく決まる話です(補助金が使えるうちに何か入れたい)。

まとめ

  • 通らないのは金額ではなく、判断できる材料が無いから
  • 決める人が見るのは買わないと何が起きるか/比較/やめ方の3つ
  • 効果は金額に換算する。厳密さより規模感
  • 金額にならないなら、ミスの件数・待ち日数・止まったときの影響
  • 数字が無いなら、1か月だけ実測する
  • 比較表に「今のまま」を必ず入れる。3年で見る
  • やめ方を3行書く。引き返せると分かると決裁は通る
  • 小さく始める案を出す
  • 稟議書はA4で1〜2枚。長いと読まれない
  • 差し戻されたら、何が足りなかったかを聞く
  • 現場の人の具体的な言葉を1行入れる
  • 補助金を主な理由にしない

まず、今かかっている時間を1か月だけ数えてください。それが揃えば、稟議はほぼ書けます。

この記事で使うシートを配っています

DOCX

システム導入 稟議書の下書きシート

決裁する人が見ているのは「買わないと何が起きるか」「他と比べたか」「失敗したときどう畳むか」の3つです。その3つが埋まる形にしたA4のひな形で、書けたら社内の稟議様式に貼り替えて使えます。

ダウンロード(無料・登録不要)

Word(.docx) / 5 KB ※社内での利用・改変・配布は自由/転載・再配布・販売は不可

読んだうえで「うちの場合はどうか」を話したい方へ

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