RPA——画面を人の代わりに操作して自動化する仕組みは、はまると強いです。既存システムに手を入れずに済むので、稟議も通りやすい。
そのぶん、数年経って止まっている現場も多いです。止まり方には共通点があります。
共通点1:壊れる前提になっていない
RPAは、画面の見た目に依存します。だから、こういうときに止まります。
- 業務システムがバージョンアップして、ボタンの位置が変わった
- ブラウザが自動更新された
- 画面に「お知らせ」のポップアップが1つ増えた
- 月末だけ表示される確認ダイアログがあった
これは不具合ではなく、仕様どおりの挙動です。RPAは画面を見ているので、画面が変われば止まります。
なので、導入時に決めるべきはこれです。
- 止まったとき、誰に通知が届くか(管理者ではなく、その業務の担当者本人に)
- 止まっているあいだ、手作業に戻せるか。その手順が1ページあるか
- 月に何回まで止まったら、作り直しを検討するか
3つめは特に効きます。「たまに止まるので毎回手で直している」状態が1年続くと、自動化する前より総工数が増えていることがあります。基準を決めておかないと、その判断は誰もしません。
いちばん怖いのは、止まったことに誰も気づかないパターンです。「動いている前提」で下流の作業が進み、数日後に数字が合わないところで発覚する。成功したときにも記録を残す(1日1行でいい)だけで、これはかなり防げます。
共通点2:作った人しか直せない
RPAの開発ツールは「誰でも作れる」と紹介されますが、誰でも直せるとは限りません。
止まる現場の共通点は、
- 変数名が
変数1変数2のまま - なぜその待ち時間を入れたのかが書かれていない
- エラー時の分岐が無い(あるいは、握りつぶしている)
- 同じ処理が複数のロボットにコピーで散らばっている
これを防ぐのは、技術ではなくルールです。
- 1ステップ1行のコメントを残す(何をしているかではなく、なぜそうしたか)
- 変数は日本語にする(
対象年月未処理件数) - 待ち時間を固定秒で置かない。「この要素が出るまで待つ」で書く(固定秒は、遅い日に必ず失敗します)
- ロボットの一覧を1枚作る(名前・何をするか・作った人・今の担当・止まると困る度)
最後の一覧は、内製化が続かない会社と、続く会社の違い にも書きましたが、2年目に効きます。
共通点3:RPAでやらなくていいものをRPAでやっている
これがいちばん大きいかもしれません。
RPAは最後の手段です。他に手がないから画面を操作しているのであって、他に手があるならそちらが確実です。
判断の順番はこうです。
- その作業自体をやめられないか(誰も見ていない資料を作っていないか)
- 元のシステムに機能はないか(CSV出力、スケジュール実行、通知設定。意外と付いています)
- ファイルやAPIでやりとりできないか(CSVを1枚挟めば、画面操作は不要になります)
- それでも駄目なら、RPA
現場で見ていて多いのは、2番を確認せずに3番を飛ばしてRPAにしているケースです。「そのシステム、CSV出せますか」と聞いたら出せた、ということが普通にあります。
画面操作は、動いているあいだは完璧に見えて、壊れたときのコストが高いという特性があります。他の方法があるなら、そちらのほうが長く持ちます。
それでもRPAが向いている場面
否定ばかりでは片手落ちなので、向いている場面も書きます。
- CSVもAPIも出せない古いシステムが相手(これが本命の用途です)
- 複数のシステムをまたいで、人が転記しているだけの作業
- 期間限定の作業(移行期間だけ、繁忙期だけ)。壊れる前に役目が終わる
- 業務を変えられない事情がある(相手先の指定様式など)
このうち3つめは見落とされがちです。「3か月だけ動けばいい」なら、雑に作ってよいんです。長く使う前提で丁寧に作ると、割に合いません。
費用の話を少しだけ
Windows に付いてくる Power Automate for desktop は、自分のPCで、自分が見ている前で動かすぶんには追加費用なしで試せます。人がいないところで自動実行するところから有料です(Power Automate、追加費用なしでどこまでできるか)。
なので順番としては、
- まず手元で動かして、本当に効果があるか確かめる
- 効くと分かってから、無人実行の予算を取りにいく
先に予算を取ってから効果を確かめると、効果が薄かったときに引き返せなくなります。
まとめ
- RPAは壊れる前提で設計する。通知先・手作業に戻す手順・作り直しの基準を先に決める
- 成功したときも記録を残す。止まったことに気づけないのがいちばん怖い
- 変数は日本語、待ちは固定秒にしない、ロボット一覧を1枚作る
- 使う前に、やめられないか/元のシステムの機能/CSVやAPIの3つを潰す
- 向いているのはCSVもAPIも出せない古いシステムと期間限定の作業
- まず手元で無料の範囲で試して、効果を確かめてから予算を取る
「これRPAでやるべきか」の切り分けからでも構いません。元のシステムの仕様が分かれば、その場でだいたい判断できます。
この記事で使うシートを配っています
自動化ツール一覧(管理台帳)
社内で作った自動化フロー・アプリ・マクロ・RPAを1枚に並べる台帳です。止まると困る度と引き継ぎにくさから、危ない行に自動で色が付きます。
ダウンロード(無料・登録不要)読んだうえで「うちの場合はどうか」を話したい方へ
OKD SOFT は、生成AI(Microsoft 365 Copilot / Copilot Studio)と Power Platform を使った業務改善・内製化支援をしています。作って渡して終わりにせず、担当の方が自分で直せる状態までご一緒します。
「何から手をつければいいか分からない」の段階でも大丈夫です。まずは現状をうかがうところから。