- 毎年の保守費用が、中身のわりに高い気がする
- 何をしてもらっているのか、説明を求めても要領を得ない
- 替えたいが、そのシステムを触れるのがその会社しかいない
- 小さな修正を頼むたびに、都度見積りが来る
替えられない原因は、契約書ではありません。データと知識が、相手側にしか無いことです。ここを取り戻す作業は、契約を切る前にやる必要があります。
まず、何にいくら払っているかを分解する
保守費用が高く感じるのは、中身が分からないからです。1本の金額で請求されていると判断できません。
内訳を聞いてください。ふつうは次に分かれます。
| 項目 | 中身 | 妥当性の見方 |
|---|---|---|
| ライセンス・使用料 | ソフト自体の利用権 | 他社の同等品と比べられる |
| インフラ | サーバー、回線 | クラウドなら実費に近いはず |
| 障害対応 | 止まったときの対応 | 年に何回発生したかを聞く |
| 問い合わせ対応 | 使い方の質問 | 年に何件あったかを聞く |
| 軽微な修正 | 帳票の項目追加など | 含まれる範囲を明確に |
| 法改正対応 | 税率変更など | 実際に何を対応したか |
「年に何回・何件あったか」を聞くのが効きます。障害ゼロ・問い合わせ3件で年間200万円なら、その内訳は説明されるべきです。逆に、月に何度も助けられているなら、それは妥当な費用かもしれません。
「高すぎませんか」と切り出すと、話が止まります。「社内で説明を求められているので、内訳を教えてほしい」という聞き方をしてください。実際そのとおりですし、相手も出しやすくなります。
替えられない原因を特定する
次の4つのどれに当てはまるかで、対処が変わります。
1. データが取り出せない
いちばん深刻です。データが自社のものとして取り出せないなら、他の話は全部そこで止まります。
確認すること:
- CSVまたはExcelで、全データを出力できるか
- 出力に追加費用がかかるか、いくらか
- 添付ファイル(PDF、画像)も出せるか
「できます」と口頭で言われたら、一度実際に出してもらってください。やってみたら一部しか出ない、というのはよくあります。
2. 仕組みが分からない
どういう処理をしているかのドキュメントが無い状態です。
- 画面と項目の一覧
- 他システムとの連携(何が、いつ、どちらから)
- バッチ処理(夜間に何が動いているか)
これは請求してよいものです。保守契約の中に「ドキュメントの提供」が含まれていないか確認してください。無いなら、次の更新のときに条件として入れます。
3. 環境が相手のものになっている
サーバーもドメインもアカウントも、相手の名義になっているケース。
- クラウドの契約名義が自社か
- 管理者アカウントを自社が持っているか
- ドメインの管理者が自社か
名義は取り戻せます。契約更新のタイミングで、自社名義に変える交渉をしてください。ここが相手名義だと、揉めたときに止められます。
4. 触れる人が1人しかいない
これは相手側の問題であると同時に、リスクでもあります。その人が辞めたら、相手の会社も対応できません。
聞いてよい質問です。「担当の方が不在のとき、対応できる方は何名いますか」。
次の更新までにやっておくこと
契約を切る・切らないに関わらず、やっておく価値があります。
- データを一度、全部出してもらう(そして、そのファイルを自社で保管する)
- ドキュメントを揃えてもらう(無ければ、作ってもらう費用を見積もる)
- 契約名義を確認し、自社名義に寄せる
- 年間の対応実績を出してもらう(件数と内容)
これは「切る準備」ではなく、当たり前の管理です。そう説明して構いません。まともな会社なら応じます。応じない場合、それ自体が判断の材料になります。
現行の保守費が年200万円で、他社なら年100万円だとしても、移行に500万円かかるなら5年かかって回収です。切り替えの見積りを取らずに「高い」と判断すると、動いたあとで後悔します。現行維持・他社移行・作り直しの3案を、3年総額で比べてください(システム導入の稟議が通らない)。
これから作るときに、決めておくこと
同じことを繰り返さないために、次に発注するときは契約の前に確認してください。
契約書か、見積書の備考に書いてもらう項目
- データは、契約終了後もCSV等で出力できる(費用の有無も明記)
- 設計書・画面一覧・連携仕様を納品物に含める
- クラウドの契約名義は自社とする
- 管理者アカウントは自社が保持する
- 保守の範囲(何が含まれ、何が別料金か)
- 契約期間と、解約の通知期限
これを最初に言うと、まともな会社は普通に受けます。渋る会社は、その時点で分かるので、それも収穫です。
依頼をまとめるシートを資料室に置いてあります。この項目も入っているので、そのまま渡してもらって構いません。
内製に切り替えるという選択
小さな修正のたびに見積りが来るのが負担なら、その部分だけ自社で触れるようにするという手もあります。
- 帳票のレイアウト変更
- マスタの追加・修正
- 集計の切り口を変える
このあたりは、データさえ取り出せれば自社側でやれることが多いです。基幹システムは触らず、そこからデータを出して Power BI や Excel で見る形にすれば、依頼の半分は消えます。
ただし、全部を内製にしようとしないでください。動いているものは動かしたままにして、周辺だけを自分たちで持つ。この形がいちばん現実的です(研修もやったのに、誰も作らなくなった)。
まとめ
- 替えられない原因は契約ではなく、データと知識の置き場所
- 保守費は内訳を聞く。特に「年に何回・何件」
- 聞き方は責めない。「社内で説明を求められている」でいい
- 原因は4つ。データが出ない/仕組みが分からない/名義が相手/触れる人が1人
- データは一度、実際に出してもらう。口頭の「できます」は当てにしない
- 次の更新までにデータ・ドキュメント・名義・実績を揃える
- 移行費用を入れて3年総額で比べる
- 次に発注するときは、出力・納品物・名義・保守範囲・解約期限を書面に
- 渋る会社なら、その反応自体が判断材料
- 内製は周辺だけ。基幹は動かさない
まず、データを一度出してもらうところからで構いません。それができる状態なら、選択肢はかなり広がります。
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