- 個人の Google ドライブや Dropbox で、業務のファイルがやりとりされている
- 取引先とのファイルの受け渡しが、LINEやギガファイル便で行われている
- 会社のPCから、私物のクラウドにアップロードできてしまう
- 禁止したいが、現場が困るのは分かっている
禁止から入ると失敗します。私物のクラウドが使われているのは、会社が用意したものが使いにくいか、そもそも用意されていないからです。理由を潰さずに禁止すると、より見えにくい形に移るだけです。
まず、何に使われているかを聞く
責める形にしないでください。「使っている人はいますか」ではなく、「どういう場面で使いましたか」と聞きます。
だいたい、次のどれかです。
| 場面 | 会社側の理由 |
|---|---|
| 大きいファイルを社外に送りたかった | 添付の容量制限に引っかかる |
| 取引先から「そこに置いて」と言われた | 相手の指定なので断れない |
| 外出先や自宅から見たかった | 社外から社内のファイルにアクセスできない |
| 私物のスマホで写真を撮って送りたかった | 業務用の受け口が無い |
| 会社のツールが使いにくかった | 使い方を教わっていない |
4つ目までは、全部「会社側が用意していない」ことが原因です。用意すれば、私物を使う理由が消えます。
「これまでの利用は問いません。どういう場面で必要だったかを教えてください」と最初に言ってください。責める姿勢で聞くと、正直な答えは返ってきません。何に使われたかが分からないほうが、リスクとしては大きいです。
会社側で用意するもの
1. 大きいファイルを社外に渡す手段
OneDrive / SharePoint の共有リンクで足ります。
- リンクに有効期限を設定できる
- 相手のメールアドレスを指定して、その人しか開けないようにできる
- あとからアクセスを取り消せる
- 誰が開いたかの記録が残る
添付や無料の転送サービスにはできないことばかりです。特に「あとから止められる」は決定的です。
使い方を1枚にまとめて配ってください。設定できることを知らないだけ、という人が多いです。
2. 社外から社内のファイルを見る手段
これが無いと、どうしても私物に逃げます。
- Microsoft 365 を使っているなら、SharePoint / OneDrive はもともと社外から見られます(ブラウザでも、スマホアプリでも)
- 制限をかけている場合は、どこまで許すかを決め直す(社給端末からのみ、多要素認証を条件に、など)
「セキュリティのため全部禁止」にすると、業務が回らず、結局私物が使われます。条件付きで許すほうが、結果的に安全です(パスワードだけの運用をやめる)。
3. 社外から受け取る手段
取引先からファイルを受け取るとき、相手のサービスに合わせるしかない場面があります。
- 受け取り専用のリンク(ファイル要求)を作れます。相手はリンクからアップロードするだけで、アカウントは不要です
- 現場の写真なら、Formsのアップロード欄で受けられます(現場の写真が、個人のスマホに散らばっている)
「こちらから受け口を出す」形にすると、相手のサービスを使わずに済みます。
ルールは、禁止だけを書かない
「私物のクラウドを禁止する」だけのルールは守られません。代わりに何を使うかを、同じ紙に書いてください。
・社外へのファイル送付 → OneDrive の共有リンク(有効期限を設定)
・社外からの受け取り → ファイル要求リンク、または Forms
・社外からのアクセス → 会社の OneDrive / SharePoint(多要素認証あり)
・現場からの写真 → 業務用フォーム
・上記で対応できない場面が出たら、禁止する前に情シスへ相談してください。
新しい手段を用意します。
最後の1行が要点です。これがないと、対応できない場面に出くわした人が、黙って私物を使います。
技術的に止めるかどうか
止めることはできます。ただし、順番を間違えないでください。
- 会社のPCから特定のサイトへのアクセスを止める(プロキシ、フィルタリング)
- クラウドアプリの利用状況を見える化する(Defender for Cloud Apps など)
代わりの手段を用意する前にブロックすると、業務が止まって、例外申請の対応に追われます。用意 → 周知 → しばらく様子を見る → それでも残るものをブロック、の順です。
ブロックせずに「何が使われているか」を見るだけなら、業務は止まりません。実態が分かると、用意すべきものが決まります。ライセンスに含まれている場合があるので、契約内容を確認してから検討してください(追加費用なしでどこまでできるのか)。
退職のときが、いちばん危ない
私物のクラウドに業務ファイルがある状態で人が辞めると、回収する手段がありません。
退職手続きに、次を入れてください。
- 業務のファイルを個人の保存先に置いていないか、本人に確認する(チェック欄)
- 置いていた場合は、会社の保存先に移してから削除してもらう
- 私物のスマホに業務の写真やデータが残っていないか確認する
確認したという記録を残してください。言った言わないになります(退職者のアカウントが残っている)。
取引先から指定された場合
「うちのサービスに置いてください」と言われることがあります。断りにくい場面です。
- 会社として許可する先を決めておく(このサービスならよい、という一覧)
- 一覧にないサービスを指定されたら、情シスに相談する
- 相談を受ける側は、代わりの提案を用意する(「こちらのリンクから送っていただけますか」)
「相手が指定したから」で個別に判断していると、把握できないまま増えます。一覧を1つ作るところから始めてください。
まとめ
- 禁止から入ると、より見えにくい形に移るだけ
- まずどういう場面で使ったかを聞く。過去は不問にする
- 理由の大半は会社が用意していないこと
- 社外への送付は共有リンク。有効期限・宛先指定・あとから止められる
- 社外からのアクセスを全部禁止しない。条件付きで許すほうが安全
- 受け取りはファイル要求リンクかフォーム。こちらから受け口を出す
- ルールに代わりに使うものを書く。「相談してください」の1行を入れる
- 技術的なブロックは代替を用意してから。見える化だけ先は有効
- 退職手続きに、私物の保存先の確認を入れる
- 取引先の指定に備えて、許可するサービスの一覧を作る
まず、大きいファイルを社外に送る方法を1枚にまとめて配ってください。それだけで、いちばん多い場面が減ります。
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