- 日常点検、設備点検、清掃記録を、紙のチェックシートでやっている
- 記入した紙を、事務所でExcelに転記している
- 過去の記録を探すのに、バインダーをめくっている
- 記入漏れに気づくのが、転記のときか、監査のとき
紙の点検記録が重いのは、書く作業ではありません。転記と、保管と、あとから探すところです。ここは丸ごと消せます。
ただし、現場に入力してもらう形は、作り方を間違えると使われません。順番を書きます。
先に、記録の目的を確認する
点検記録には、性格の違うものが混ざっています。
| 目的 | 例 | 求められること |
|---|---|---|
| 法令・規格で義務 | 消防設備、車両の日常点検、食品衛生 | 様式と保存期間が決まっている場合がある |
| 異常を早く見つける | 設備の温度、圧力、稼働音 | 数値の推移が見えること |
| やったことの証明 | 清掃、巡回 | いつ・誰が・どこを、が残ること |
1つ目は、様式を勝手に変えられない場合があります。電子化してよいか、様式をどこまで変えられるかを、先に所管の規程や監督官庁の要件で確認してください。ここは私たちの領域ではないので、必ず確認をお願いします。
2つ目と3つ目は、自社の判断で変えられます。
現場に入力してもらうときの、失敗しやすい場所
1. 入力の入口が遠い
アプリを開くまでに、ログインして、メニューから探して、という手順があると使われません。
- QRコードを現場に貼る(設備ごと、場所ごと)。読み取ったらその設備の入力画面が直接開く
- スマホのホーム画面にショートカットを置く
「読み取ったら、その場所の入力画面が出る」が理想です。設備を選ぶ操作を減らせます(現場にスマホで入力してもらうとき、だいたいここで失敗する)。
2. 入力に時間がかかる
紙なら30秒で終わっていたものが、スマホで2分かかるなら、現場は紙に戻ります。
- 既定値を入れておく(前回と同じなら、そのまま送信できる)
- 「異常なし」を1タップで通せるようにする
- 数値の入力はテンキーが出るようにする(入力モードの指定)
- 選択肢は指で押せる大きさにする
異常がないときが大半です。そこを最速にしてください。異常があるときだけ詳しく入れてもらう形にします。
3. 電波が入らない
工場の奥、地下、屋外。電波が無い前提で設計してください。
- Power Apps なら、オフラインで入力して、戻ってから送信する形にできます
- 難しい場合は、電波の入る場所にまとめて入力する運用にする(点検自体は紙のメモで、戻って入力)
「現場で入力してもらう」にこだわらないでください。転記が消えるだけで、目的の大半は達成されます。
点検項目が10個以内で、オフラインが不要なら、Microsoft Forms で足ります。QRコードにして貼れば、その場で入力できます。まずこれで1か月回して、足りないところが分かってから Power Apps を検討してください。作り込んでから「使われない」と分かるのがいちばん損です。
異常が出たときの流れを、先に決める
これを決めていないと、電子化しても「記録が残るだけ」になります。
- 異常を入力したら、誰に通知が飛ぶか
- 通知を受けた人は、何をするか
- 対応したことを、どこに記録するか
Power Automate で、異常のときだけ Teams か メールに通知を出すのは簡単です。ただし、通知を受ける人と、その人がやることを先に決めてください。決まっていないと、通知が溜まって見られなくなります。
温度が基準値を超えた
→ 設備担当のTeamsチャネルに通知
→ 担当が現地確認し、対応内容を同じ記録に追記
→ 3時間以内に対応が入らなければ、課長にも通知
最後の1行(エスカレーション)まで決めておくと、抜けが減ります。
過去の記録を、探せるようにする
紙をやめる最大の利点はここです。
- 設備ごと・期間ごとに絞り込める
- 数値の推移をグラフで見られる
- 監査や検査のときに、その場で出せる
推移が見えるようになると、壊れる前に気づけることがあります。「先月から少しずつ温度が上がっている」は、紙のバインダーでは分かりません(Power BIでダッシュボードを作りたいが、何を出せばいいか分からない)。
保存期間と、消し方を決める
- 法令で保存期間が決まっているものは、その期間は消さない
- 期間を過ぎたものを、どうするか(残す/保管用に移す)
電子は場所を取らないので「全部残す」で済みがちですが、件数が増えると表示が重くなります。年度で分ける、古い年度は別に移す、といった方針を最初に決めておいてください。
紙を完全にやめる前に
1か月は、紙と電子の両方でやってください。
- 入力されているか(実際に全員が使っているか)
- 抜けが出ていないか
- 現場から出た不満は何か
そのうえで、紙をやめる日を決めて告知します。両方が続くと、現場の負担が2倍のままになります。期限を切ってください。
作ってから全員に配るのではなく、いちばんよく点検をしている人に、途中で1回触ってもらってください。「この順番だと押しにくい」「この項目は要らない」が、その場で出ます。作り直しが1回減ります(現場が新しいやり方を嫌がる)。
まとめ
- 重いのは書く作業ではなく、転記・保管・探すところ
- 法令で様式が決まっているものは、先に確認する(変えられない場合があります)
- 入口はQRコードで、その場所の入力画面が直接開く形に
- 異常なしを1タップで通せるようにする。既定値を入れておく
- 電波が無い前提で。現場で入力にこだわらない。転記が消えれば目的は達する
- まず Forms で1か月回す。足りなければ Power Apps
- 異常時の通知先・やること・エスカレーションを先に決める
- 推移が見えると、壊れる前に気づける
- 保存期間と、期間後の扱いを最初に決める
- 1か月は両方。そのうえで紙をやめる日を告知する
- よく点検している人に、途中で触ってもらう
まず、いま使っている紙のチェックシートを1枚、そのままフォームにしてみてください。30分で作れて、そこから議論が具体的になります。
この記事で使うシートを配っています
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