- 「私の有給、あと何日ですか」と聞かれるたびにExcelを開いて数えている
- 付与日が入社日基準なので、人によって基準日がバラバラ
- 年5日の取得義務を、11月ごろに慌てて確認している
- 管理簿を作っているが、勤怠システムの数字と合っているか自信がない
原因は、残日数がどこにも「1か所で」書かれていないことです。付与の記録は総務のExcel、取得の記録は勤怠システム、申請の記録はメール。3つを頭の中で足し算しているので、聞かれるたびに調べ直すことになります。
先に、法律で決まっている部分だけ整理する
ここは会社ごとの運用ではなく、決まっている話です。
- 雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した人に10日付与
- 以後1年ごとに付与日数が増え、6年6か月で20日が上限
- 有給の時効は2年。繰り越せるのは1年分まで
- 年10日以上付与される人には、年5日は必ず取得させる義務がある(会社側の義務)
- 年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存する義務がある
パートやアルバイトも、所定労働日数に応じて比例付与されます。「うちのパートには関係ない」は誤りです。
社員が取らなかった場合、責任は会社側にあります。労働基準法違反として、対象者1人につき30万円以下の罰金の定めがあります。「本人が取らないので」は理由になりません。だから11月に慌てるという状況が起きます。
管理簿は、3つの列があれば足ります
年次有給休暇管理簿に必要なのは、次の3つだけです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 時季 | 実際に取得した日付 |
| 日数 | 取得した日数(半休なら0.5) |
| 基準日 | 付与された日 |
これを労働者ごとに、3年保存します。様式は決まっていません。Excelでも、勤怠システムの出力でも構いません。
つまり、勤怠システムから出せる形になっていれば、それが管理簿です。別に作る必要はありません。まずお使いの勤怠システムに「有給管理簿」の出力があるか確認してください。あることが多いです。
基準日をそろえるかどうか
入社日基準にしていると、付与日が1年365通りになります。管理が重くなる最大の原因がここです。
基準日を統一する(一斉付与)という方法があります。たとえば全員4月1日にそろえる。
| 入社日基準 | 一斉付与 | |
|---|---|---|
| 管理の手間 | 重い | 軽い |
| 付与日数 | 法定どおり | 法定より多くなる(前倒しになるため) |
| 就業規則 | そのまま | 変更が必要 |
一斉付与にすると、社員にとっては前倒しになるので不利益変更にはなりません。ただし会社の負担は増えます。社員数が数十人規模なら、管理の手間とコストを比べて判断する価値があります。
すぐには変えられないので、今期は入社日基準のまま台帳を作ってください。基準日の統一は、就業規則の変更として別に検討する話です。
台帳を1本にする
やることは1つです。付与・取得・残日数を、同じ1つの表で持つ。
最低限の列
社員番号 / 氏名 / 入社日 / 基準日 / 今期付与日数 / 前期繰越 / 取得日数 / 残日数 / 年5日の達成
残日数 と 年5日の達成 は計算式にしてください。手で入れると必ずずれます。
残日数 = 今期付与日数 + 前期繰越 - 取得日数
年5日達成 = IF(今期付与日数>=10, IF(取得日数>=5,"○","未達"), "対象外")
これだけで、「あと何日か」に即答できて、年5日の未達者も一覧で見えます。
置き場所
SharePointリストにするか、Excelを共有フォルダに置くか。社員数が50人以下ならExcelで十分です。ただし共有ブックで複数人が同時に開くと待たされるので、更新するのは1人と決めてください(「誰かが開いています」で待たされる)。
100人を超える、拠点が複数ある、履歴を残したい、のいずれかならSharePointリストのほうが向きます(台帳が重い。SharePointに移したほうがいいのか)。
年5日を、11月に慌てないようにする
台帳ができたら、四半期に1回だけ見てください。
- 期の開始から3か月:取得0日の人をリストアップ(まだ何もしない)
- 6か月:取得0〜1日の人に、上長経由で声をかけてもらう
- 9か月:未達見込みの人について、会社から時季指定する日を決める
時季指定は、会社が「この日に取ってください」と指定する仕組みです。就業規則に定めがあることが前提なので、規則を確認してください。
9か月の時点で動けば、まず間に合います。11月から動くと、繁忙期とぶつかって全員分は消化できません。
月に1回、給与明細と一緒に「あなたの有給残日数 / 今期の取得日数」を配るだけで、問い合わせが減り、取得も進みます。総務が追いかけるより、本人が自分の数字を知っているほうが動きます。台帳が1本になっていれば、差し込み印刷かメールで自動化できます。
申請の入口も、ついでに1つにする
台帳を作ると、次に気になるのが「申請がメールと口頭と紙で来る」ところです。
勤怠システムに申請機能があるならそれを使ってください。無い場合は、Microsoft Forms か Power Apps で申請だけ受ける形にできます。承認の段数は増やさず、上長1人の承認だけにしてください(紙の申請書をやめるとき、いきなりアプリを作らないほうがいい理由)。
ただし、台帳が1本になっていないうちに申請アプリを作らないでください。申請だけ電子になっても、残日数が別管理のままだと総務の手間は変わりません。順番は台帳が先です。
分からないと書いておくこと
有給の付与日数の計算、比例付与の判定、時季指定の運用は、就業規則と実際の労働条件で変わります。ここに書いたのは2026年8月時点で調べられた範囲です。制度の判断は社会保険労務士に確認してください。
私たちが手伝えるのは、台帳の形を決めて、計算式と一覧を組むところまでです。
まとめ
- 聞かれるたびに調べているのは、残日数が1か所に無いから
- 管理簿に必要なのは時季・日数・基準日の3つだけ。様式は自由
- 勤怠システムから出せるなら、それが管理簿。別に作らない
- 台帳は1本。
残日数と年5日の達成は計算式にする - 年5日は会社側の義務。四半期ごとに見て、9か月時点で時季指定を決める
- 残日数を本人に毎月配るのがいちばん効く
- 基準日の統一は効くが、就業規則の変更が要る。台帳を先に作る
- 申請アプリより台帳が先。順番を逆にすると手間が減らない
まず今の付与状況を1枚のExcelに集めてください。そこから先は、計算式を入れるだけです。
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