- 申請を出したあと、今どこにあるか申請者が分からない
- 「あの件どうなりました?」の問い合わせが、総務や情シスに来る
- 承認者が出張や休みだと、そこで完全に止まる
- 電子化したのに、催促の電話は減っていない
紙をやめても催促が減らないのは、止まっている場所が見えていないからです。紙のときは机の上を見に行けましたが、電子にすると余計に見えなくなります。
見えるようにする前に、段数を数える
先に確認してください。承認は何段ありますか。
3段以上あるなら、まず段数を減らすほうが効きます。見える化は、そのあとです。
| 段数 | 起きること |
|---|---|
| 1段 | ほぼ止まらない |
| 2段 | ときどき止まる |
| 3段以上 | 必ずどこかで滞留する |
段が1つ増えるごとに、待ち時間は足し算ではなく掛け算で増えます。それぞれの段で「まとめて見る日」ができるからです。
減らし方
金額で分けてください。
5万円未満 … 上長のみ(1段)
5万〜50万円 … 上長 + 部門長(2段)
50万円以上 … 上長 + 部門長 + 役員(3段)
件数の分布を見ると、8割が下の段に入ることがほとんどです。上の段の丁寧さを、下の8割にも適用しているのが滞留の原因です。
「減らしましょう」と現場で決められない場合があります。その場合は、現状の分布(金額別の件数)を出して、規程を見直す提案の材料にしてください。数字がないと、この話は前に進みません(システム導入の稟議が通らない)。
今どこにあるかを、申請者に見せる
段数を減らしたうえで、状態が見えるようにします。
必要なのは1つの一覧です。凝ったものは要りません。
| 申請番号 | 申請日 | 申請者 | 件名 | 状態 | 今の担当 | 経過日数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-0142 | 8/25 | 山田 | 備品購入 | 承認待ち | 佐藤部長 | 4日 |
「今の担当」と「経過日数」の2列が要点です。この2つがあると、申請者が自分で追えるので、総務への問い合わせが消えます。
経過日数は、3日を超えたら色を変えてください。人は数字より色で気づきます。
SharePointリストで作るなら
リストの列に 状態(選択肢)と 現在の承認者(ユーザー)と 申請日 を持って、書式設定で3日超を赤くするだけです。Power Apps を作らなくても、リストのビューで足ります。
承認者が不在のときに止まらないようにする
これが最後まで残る問題です。対策は3つあり、上から順に検討してください。
1. 代理承認者をあらかじめ決めておく
全員分の代理を、先に決めて表にしておく。不在になってから探すと、そこで1日消えます。
佐藤部長 → 代理: 田中課長
田中課長 → 代理: 佐藤部長
2. 一定日数で自動的に次へ回す
Power Automate なら、3営業日反応がなければ代理承認者にも通知を出すという組み方ができます。
ただし、自動で承認したことにするのは避けてください。承認の記録として意味がなくなります。通知を増やすところまでにして、押すのは人にさせます。
3. 「不在時は権限を委譲」を運用で決める
長期の休みや異動のときだけ、システム上の承認権限を一時的に移す。頻繁にやると誰が承認したか分からなくなるので、1週間以上の不在に限る、といった線引きをしてください。
承認者 = 佐藤太郎 と入れていると、異動のたびに全部直すことになります。承認者 = 営業部長 として、部長が誰かは別の表で持つ。これだけで、人事異動のたびの手直しが消えます(社員名簿や取引先一覧が部署ごとにある)。
通知を増やしすぎない
止まる原因の1つは、通知が多すぎて見られていないことです。
- 申請するたびに全員にメール
- 1件ごとに1通
- 承認者が1日に20通受け取る
こうなると、メールは開かれなくなります。
まとめて1日1回にしてください。
承認待ちが3件あります。(一覧へのリンク)
朝9時に1通だけ。これで十分です。件数と、そこへ飛べるリンクがあれば、承認者はその場で処理できます(メールで来た依頼が埋もれて対応漏れになる)。
承認者側の「まとめて処理」を作る
承認が止まる現実的な理由は、1件ずつ開くのが面倒だからです。
- 一覧からチェックを入れて、まとめて承認できるようにする
- 承認の画面で、判断に必要な情報がその画面に全部あるようにする(添付を開かないと分からない形にしない)
添付のPDFを開かないと金額が分からない、という作りだと、承認者は後回しにします。金額・件名・理由の3つは、一覧の時点で見えるようにしてください。
効果の測り方
導入前に、この2つを数えておいてください。
- 申請から最終承認までの平均日数
- 3日以上止まった件数の割合
導入後に同じものを測ります。「便利になった」より、「平均5.2日が2.1日になった」のほうが、次の話が通ります(「で、効果は?」に答えられない)。
数えるのは、申請日と承認日の差を引き算するだけです。
まとめ
- 見える化の前に、承認の段数を数える。3段以上なら減らすのが先
- 金額で段数を分ける。8割は下の段に入る
- 一覧に「今の担当」と「経過日数」を出す。3日超は色を変える
- 凝ったアプリは要らない。SharePointリストのビューで足りる
- 代理承認者をあらかじめ表にしておく
- 自動で次に回すのは通知まで。押すのは人
- 承認者は役職で持つ。人名で持つと異動のたびに直すことになる
- 通知は1日1回まとめて。件数とリンクだけ
- まとめて承認できるようにする。判断材料は一覧に出す
- 導入前に平均日数と3日超の割合を数えておく
まず、直近1か月の申請を10件だけ見て、どこで何日止まっていたかを書き出してみてください。段数を減らすべきか、見える化で足りるかが、それで分かります。
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