- 契約書に判子を押すためだけに、誰かが出社している
- 製本して、印紙を貼って、郵送して、返送を待つ。1件に2週間かかる
- 過去の契約書がどこにあるか、探すのに時間がかかる
- 電子契約に切り替えたいが、相手も紙なので進まない
紙の契約が重いのは、判子そのものではなく、製本・印紙・郵送・保管の4つがまとめて付いてくるからです。ここを分けて考えると、手をつけられる場所が見えます。
そもそも、契約に判子は要りません
日本の法律では、契約は当事者の合意で成立します。書面も押印も、原則として要件ではありません(一部の契約を除く)。
判子が使われてきたのは、「本人が合意した」ことをあとから示すためです。電子契約は、それを電子署名やアクセスの記録で示す仕組みです。
つまり、切り替えられない理由は法律ではなく、社内と取引先の慣行のほうにあります。
不動産の一部、定期借地・定期建物賃貸借、任意後見契約など、書面や公正証書が要件になっているものがあります。扱っている契約の種類によって変わるので、法務や顧問弁護士に一度確認してください。一般的な業務委託・売買・秘密保持契約は、電子で問題ないことが多いです。
印紙代がなくなるのは、思ったより効きます
電子契約には収入印紙が要りません。
紙の契約書は、金額に応じて印紙税がかかります(請負契約なら100万円超で200円、1,000万円超で1万円、といった具合)。年間の契約件数が多い会社では、これだけで数十万円になることがあります。
まず、去年1年間で貼った印紙の額を数えてみてください。電子契約サービスの費用と比べる材料になります。稟議を書くときの根拠にもなります(システム導入の稟議が通らない)。
相手を待たずに始められる場所
「相手も電子でないと無理」と思われがちですが、先に自社だけで変えられる部分があります。
1. 自社が「受ける側」のとき
取引先から電子契約の依頼が来たとき、受けられる体制になっていますか。
- 誰が受け取るか(担当者個人のメールだと、退職時に消えます)
- 誰が承認するか
- 受け取ったPDFを、どこに保存するか
受ける側は、サービスの契約が要らないことがほとんどです。相手のサービスからメールが届いて、リンクを開いて同意するだけです。ここは今週決められます。
2. 社内の決裁を先に電子にする
契約書に判子を押す前段の、社内の稟議・決裁が紙で回っていませんか。ここは相手が関係ないので、自社の判断だけで変えられます(申請が、誰のところで止まっているか分からない)。
契約締結までの日数のうち、社内の決裁で消えている日数を一度数えてみてください。相手とのやりとりより長いことがあります。
3. 保管を先に電子にする
締結が紙のままでも、スキャンして一覧を作ることはできます。
| 列 | 例 |
|---|---|
| 契約書名 | 業務委託基本契約書 |
| 相手先 | サクラ商事株式会社 |
| 締結日 | 2026-04-01 |
| 期間・自動更新 | 2027-03-31 / 自動更新あり |
| 解約通知の期限 | 期間満了の3か月前 |
| 保管場所 | 本社金庫/PDF: 契約/2026/ |
「解約通知の期限」の列が効きます。気づいたら自動更新されていた、を防げます。これは電子契約の話とは別に、今日作れます。
電子契約サービスを選ぶとき
2つの方式があります
| 方式 | 内容 | 向き |
|---|---|---|
| 当事者型 | 契約する本人が電子証明書を持つ | 証明力は高いが、相手にも準備が要る |
| 立会人型(事業者署名型) | サービス事業者が、メール認証などを経て署名する | 相手はメールを受け取るだけ。導入が速い |
多くの会社は立会人型で始めます。相手に負担がかからないのが最大の理由です。
確認する項目
- 相手側の費用がゼロか(ここが有料だと、まず断られます)
- 送信件数の課金か、月額固定か
- 契約が終わったあと、締結済みのPDFを自社で保管できるか(サービスを解約したら見られない、では困ります)
- 一覧・検索・期限のアラートがあるか
- 印鑑証明のような、社内の承認フローを組めるか
3つ目が重要です。データを自社で持てるかどうかは、あとで乗り換えるときに効きます(保守費用が高い。他社に替えたいが替えられない)。
取引先に切り替えてもらうときの言い方
いきなり全社に案内を出さないでください。件数の多い相手から、1社ずつです。
言い方は、相手の利点を先に出します。
契約の締結を電子でも行えるようにしました。そちら側の費用や登録は不要で、メールのリンクから同意いただくだけです。印紙代がかからず、往復の郵送も不要になります。もちろん、これまでどおり紙でも承ります。
「これまでどおり紙でも」を必ず添えてください。取り上げられると感じると断られます。選択肢を増やす形にすると、意外と移ってくれます(FAXをやめたいが、取引先が使っている)。
保存の話
電子で締結した契約書は、電子取引データに当たります。
- 電子で受け取った・送った契約書は、電子のまま保存が必要になります
- 保存の要件は、請求書などと同じ考え方です
紙のときの「金庫にしまう」に相当する置き場所を、電子側にも作ってください(メールで届いた請求書を、印刷して保存していませんか)。税務上の判断は顧問税理士に確認してください。
社内で決めておくこと
サービスを入れる前に、この4つを決めてください。決めずに導入すると、運用で揉めます。
- 誰が送信できるか(アカウントを持つ人。多すぎると統制が効きません)
- どの金額から、誰の承認が要るか(今の稟議規程に合わせる)
- 契約書のひな形を、どこに置くか(ひな形が人によって違う)
- 締結済みのPDFを、どこに保管するか
4番を決めないと、サービスの中にだけ残って、社内から探せなくなります。サービスとは別に、自社の保管フォルダにも入れる運用にしてください。
分からないと書いておくこと
契約の有効性や、どの契約が書面を要するかは法律の判断です。ここに書いたのは2026年8月時点で調べられた範囲で、顧問弁護士や法務に確認してください。
私たちが手伝えるのは、社内の決裁の流れを組み直すことと、契約の一覧・保管の仕組みを作るところまでです。
まとめ
- 重いのは判子ではなく、製本・印紙・郵送・保管の4つ
- 契約に押印は原則不要。止めているのは慣行のほう
- 印紙代を1年分数える。稟議の根拠になる
- 相手を待たずにできることが3つ。受ける側の体制/社内決裁/保管
- 解約通知の期限を一覧に入れる。自動更新の事故が防げる
- サービスは立会人型が導入しやすい。相手側の費用ゼロが条件
- 締結済みPDFを自社で保管できるかを必ず確認する
- 案内は件数の多い相手から1社ずつ。「紙でも承ります」を添える
- 電子で締結したものは電子取引データ。保存の置き場所を先に決める
- 導入前に、送信できる人/承認の基準/ひな形/保管先の4つを決める
まず、去年1年分の印紙代を数えてみてください。それだけで、話が具体的になります。
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